大阪で太ったウェルテルが笑う

大証元副理事長に無罪判決 仮装売買事件で大阪地裁

証券取引法の159条をご覧ください。

第159条〔相場操縦的行為の禁止〕 

「何人も、他人をして証券取引所が上場する有価証券、有価証券指数又はオプションについて、上場有価証券の売買、有価証券指数等先物取引、有価証券オプション取引又は上場有価証券若しくは上場有価証券の価格に基づき算出される有価証券店頭指数に係る有価証券店頭デリバティブ取引のうちいずれかの取引が繁盛に行われていると誤解させる等これらの取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもつて、次に掲げる行為をしてはならない。

一 権利の移転を目的としない仮装の上場有価証券の売買をすること。(以下略)」

地裁の判断によると無罪なのだそうです。

理由は利益を得る目的ではなかったからだそうで、とすると今後胴元は売買数の操作を行っても無罪ということになるのかもしれません。

しかしそもそも一般投資家は市場の気配というものを判断材料として相当重要視するのではなかったのでしょうか?

投資家ばかりではありません。

わたしたちにはあまりに判断するための時間がないため、薬局においてはもっとも売れているシャンプーを手にとり、行列のあるラーメン屋に並ぶはずです。

地裁の理論はおそらくこういうことだと思います。

「TV番組で笑いの効果音をどれだけ効果的に入れようと、プロデューサーは直接利益を得るわけでないから、笑うかどうかは視聴者の責任である。」

しかし世の中には見過ごせない法則もあります。

例えば新聞で誰かの自殺が大きく報じられると、翌日の自動車事故の数が極端に増えたりします。

これをウェルテル効果と呼びます。

その昔ゲーテが主人公の自殺を扱った『若きウェルテルの悩み』という小説を書いた後、ヨーロッパ中で自殺が相次いだことから名づけられています(ロバート・B・チャルディーニ 影響力の武器)。

同じような問題を抱える人々がどのように行動したのかに基づいて自分のとるべき行動を決定するという特性を誰しもが大なり小なり備えています。

もし投資する人たちを惑わせる者が罰せられないとしたら、せめてその者を市場は自浄作用をもって排斥しなければなりません。

そうでなければ今後も騒がしい亡霊の後を、次々と大切なお金を握り締めたまま人々がついていくことになります。 
 
 


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