あいまいな「公的行為」 象徴天皇性と政治利用
「中国の習近平国家副主席との特例会見設定で、にわかにクローズアップされた天皇陛下の「公的行為」。明文化はされておらず、国事、私的両行為との境界は長く論議の的になってきた。議論の核心は、戦後の象徴天皇制と天皇が非政治的であることの両立にある。しかし、建前と現実の乖離(かいり)があるのも事実。今回の問題も戦後、あいまいにされてきた難問が噴出した形ともいえそうだ。」(東京新聞)
旧憲法の第四条をご覧ください。
大日本帝国憲法 第4条 |
天皇の国事行為とは、天皇が国の機関として行う行為のことです。
しかしそれは俗称であり、正確には憲法上「国事に関する行為」として表現されます。
憲法は国事行為をその4条2項・6条・7条で、13種類揚げています。
具体的には、
・単なる儀礼的行為であり、かつ、法的効果を伴わない事実行為であるものとして
(1)外国の大公使の接受(7条9号)
(2)儀式の挙行(7条10号)
・天皇が「認証」だけを行うとされることによって天皇の行為が儀礼的・名目的なものとなっているものとして
(3)国務大臣および法律の定めるその他の官吏の任免ならびに全権委任状および大公使の信任状の認証(7条5号)、
(4)恩赦の認証(7条6号)
(5)批准書及び法律の定めるその他の外交文書の認証(7条8号)
・もともと国政に関する行為でありながら、実質的決定権が他の国家機関に付与されていることによって天皇の行為が儀礼的・名目的なものになっているものとして
(6)内閣総理大臣の任命(6条1項)
(7)最高裁判所の長たる裁判官の任命(6条2項)
(8)憲法改正、法律・政令及び条約の公布(7条1号)
(9)国会の召集(7条2号)
(10)衆議院の解散(7条3号)
(11)国会議員の総選挙の施行の公示(7条4号)
(12)栄典の授与(7条7号)
・以上とは異なる特殊なものとして
(13)国事に関する行為を委任する行為(4条2項)
以上が指定されています
国事行為には,7条10号儀式の挙行のような儀礼的なものもありますが、国会の召集・衆議院の解散のように、政治的なものも存在しています。
しかしながら天皇が国事行為を行うには、内閣の助言と承認を必要とされており、自己の意思で単独に行うことはできません。
したがってその責任は内閣が負うことになり、天皇がこれを負うことはありません。
さらにいえば天皇が国の機関として行うことのできるのはこの国事行為だけであって、国政に関する権能はこれをもちません。(憲法4条1項)
戦中まで使用されていた旧憲法第四条を見れば、かつての天皇は統治権の総覧者、つまり全ての権力を掌握する立場にありました。
しかしながらわたしたちの国が戦争に負けた後、連合国によって大幅に民主主義を注入されることとなった現行憲法では、天皇のもとには国政に関する権能を置かないこととされ、その行為の政治責任も内閣が取ることとなりました。
これゆえ現行憲法下では、天皇は13種の国事行為のみを行うものとされているのです。
天皇を巡る憲法論争は、常に天皇という存在そのものに対する解釈を、陣営の見えざる背景として争われています。
そしてそこには”注入された民主主義”という起源が横たわり続けています。
それはせっかくの民主主義に、構造力学的モーメントを与え続けているのではないかと長年疑わせているのです。(私見)