明治安田生命の不払いマニュアルによる富の蓄積

明治安田「不払いマニュアル」入手のドタバタ(fresheye)
「契約者が保険加入前に自分の健康状態や病歴を正確に申告しない『告知義務違反』が原因で保険金が不払いになり、顧客からクレームが来た時には、『告知義務は重要事項、正確に告知すべきことになっている』と、あくまでも突っぱねろと想定問答が書かれている。親切に法的にもそれで押し通せるという『解説』も付いていて、40ページにも及ぶ“大作”です(マニュアルを入手した大手生保関係者)」

SAP一般条項の16条をご覧下さい。

自家用自動車総合保険普通保険約款

第16条(対人事故通知の特則)

「賠償責任条項第1条(当会社の支払責任-対人賠償)第1項に規定する対人事故の場合において、当会社が保険契約者または被保険者から第14条第3号(事故内容の通知)の規定に定める通知を受けることなく、事故の発生の翌日から起算して60日を経過したときは、当会社は、その事故による損害に対しては、保険金を支払いません(以下略)」

SAPとは自家用自動車総合保険普通保険のことで、それは対人、対物、無保険車、自損、搭乗者、車両の六つの保険をセットにした代表的な自動車の損害保険です。

SAP一般条項とはその保険に常にくっついてくる約款の中にある章であり、その16条には「保険会社が事故内容の通知通知を受けずに、事故発生の日から60日を経過したらお金を支払いません」と書いてあります。

これを俗に60日条項と呼びます。

昭和62年の小法廷において、最高裁は60日条項を盾にとって保険金の支払いを拒否した保険会社に対し「60日条項も絶対ではない」と判じて、経済社会の恐るべき強者である保険会社達を驚愕させました。

その判例では60日条項の違反、つまり通知の遅れを二種類に分け、信義則上許されない目的の場合は確かに支払う必要はないが、そういう目的がない場合にまで「約款にあるから支払い額ゼロ円などとは許されない」としたのです(要約)。

学説だけでなく判例上も、保険約款の事故通知義務に関する条項は制限的に解釈すべき、つまりそれを絶対視などしてはならないことが一般理論化しています。

通知が遅れたら、自動車共済組合がそれによって受けた損害分だけを相殺すればいいだけの話なのです。

形式にすぎる保険会社の約款を、最高裁が堂々とねじ曲げたものとして、本判例(昭和62年2月20日)は非常に注目されています。

(以上参照:損害保険判例百選 有斐閣

私たちは万が一の時のことを考えると保険ナシではとても生活を送ることもできず、自動車のハンドルを握ることもできません。

そのため保険会社が約款を用意すれば、そういうものかと良く読みもせず印鑑を押し、いざ事が起これば不払いマニュアルによって「約款に書いてありましたから」と怒られ、そういうものかと口を閉じてしまいがちです。

しかし大切なのは、あなたや私は保険会社と「万が一」の起こる確率をめぐって博打を張っているのだという行為の本質に意識的になることです。

なぜなら「万が一」の目が出たとき、読めるはずのない細かい文字の約款を持ち出して、ルーレットのディーラーが常に払い戻しを渋るなら、それはもはや賭博でさえなく、ただの搾取でしかないからです。

そしてそれが保険会社と加入者の賭博でさえなくなっていることを実証するように、保険という商品群は、不払いマニュアルに補強されて今日も保険会社の本社ビルをどんどん巨大なものにしていっている恐れがあります。

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