タレントも顔に責任アリと、裁判所が念押しした

アンジェリーナ・ジョリー 13億円でファッションブランドの“顔”に(ABC振興会 )
「女優アンジェリーナ・ジョリーが米ファッションブランドの広告に出演することがわかった。歴代の女優からブランドの“顔”になったケースでも最も高額である12ミリオンドル(13億円)のギャラだという。」

民法の719条、特に2項をよくご覧下さい。

第719条〔共同不法行為者の責任〕

「1 数人が共同の不法行為に因りて他人に損害を加へたるときは各自連帯にて其賠償の責に任ず共同行為者中の孰れか其損害を加へたるかを知ること能はざるとき亦同じ

2 教唆者及び幇助者は之を共同行為者と看做す」

芸能人が広告に出演する場合、その広告内容を調査する義務があるとした判例高田浩吉事件というものがありますので、その判例を見てみましょう。

(以下参照:判例タイムズ 大阪地裁 昭和62年3月30日判決)

芸能人、高田浩吉さんはマネージメント会社を通じて、原野商法会社の宣伝用映画出演の依頼を受け、販売予定の土地を見学している場面などの撮影、推薦文を作り、原野商法会社主催のディナーショーに出演しました。

その結果商品に対する信頼は高まり、被害者を続出させる原因になりました。

パンフレットには高田さんと会社役員との個人的なつながりや、北海道の土地に対して積極的な評価があり、高田浩吉さん個人の立場で原野広告会社を推薦していました。

判例は「広告主たる被告会社の事業内容・信用性はもとより、その扱う商品 (北海道の山林、原野)の価値についても原告ら一般人はその判断資料を殆ど持ち合わせていないのであるから、被告高田らいわゆる有名人による第三者的な立場からの推薦が大きな判断資料となる可能性が高い」としました。

しかもその販売価格も高額だったため、高田さんには、「自己の持つ影響力を認識し、広告主の事業に不正があった場合に生じる損害が多額に上る可能性をも認識し、自分が、一人のタレントとして被告会社の単なる情報伝達手段としての役割を演じるにとどまらず、高田浩吉個人の立場から、被告会社あるいはその取り扱う商品の推薦を行う場合には、その推薦内容を裏付けるに足りる調査を行うべき義務がある」ともしています。

そのうえで高田さんは原野商法会社の事業内容を調査することをまったくしなかったので、パンフレットに推薦文を載せるにあたり必要な注意義務を怠った過失があると認められ、原野商法会社の不法行為を過失により幇助したものとして、民法719条2項に基づき、原告らに対して、各損害額の6割を賠償する責任があると判断されました。

芸能人が商品の広告に出る時、場合によっては幇助という共同不法行為者になるのだと認定されたわけです。

この判例を逆に読めば、高額な商品の広告に信用ある芸能人が、しかも個人的推薦の色彩を濃く出演する時は、場合によっては自分も損害賠償までするつもりで推薦文を書いていることになります。

タレントが毎日TVショッピングで熱弁をふるう現代消費社会においては、ひとつのメルクマールになる判例といえるでしょう。

裁判所は、有名人がその有名度を利用して経済活動をする場合、TVの向こう側からにこやかに手を振る仮想人格としての一面のほかにも、同じ空気を吸う生き物としての責任も当然に検討しています。
 
 
 
 

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