ピーマンに現れたスマイルマークと著作権

輪切りのピーマンから“笑顔” 旭川 【写真】北海道新聞
「同市内の石井敬子さん(58)が育て、娘の明恵さん(28)に贈った。明恵さんがカットすると、ピースマークのような笑顔が出てきたという。 」

著作権法の119条1号をご覧下さい。

第119条 
「次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

一 著作者人格権著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害した者」 

まず、記事中写真の笑顔のマークは俗にスマイルマークと呼ばれるもので、記事にある「ピースマーク」とは鳩の足跡のようなマークである点を指摘させて下さい。

次にそのスマイルマークですが、実は著作権者がはっきりしていません。

ベトナム戦争に対する反戦運動の高まりのなかから、(おそらくはヒッピーと呼ばれたようなコミューンのなかから)自然発生的に生まれてきたものだといわれています。

かつて日本で、「それはフランス人記者が1972年に考案したものだ」と主張されたことがありましたが、実はその前年には日本の別メーカーがすでにスマイルマークをかたどった商品を流通させていた記録があり、現在まで結局の所、著作権者は不明です。

この点で、いわゆるエイベックスと2ch周辺ファンの「のまネコ問題」と同根の法的不確定感を生んでいます。

かつてIBMのBIOSやそのマニュアルを秋葉のショップがコピーして販売していた事件において「IBMに著作権があるとは知らなかった」とする業者に対し、東京地裁は「著作権法119条1号により著作権を侵害した者を処罰するためには,行為者が当該著作物の権利者は具体的に誰かとの認識までは必要ではなく,権利者が存在するとの認識があれば足りる」として、秋葉の業者側の主張を退けています(昭和63年3月23日 参照:著作権判例百選)。

著作権法の119条は懲役刑を含む非常に重い罰則です。

そしてそれは、耳をふさいでいたからといって、著作権主張の声を「聞こえなかった」とはいわせないのが判例法理です。

つまりその強力な保護条文は、人間にはよくよく調べた上での創造活動を要求しています。

ただしピーマンなら、その義務はありません。

 

 

法理メール?  * 発行人によるメールマガジンです。