宇宙旅行の時代にもたらされる哲学

宇宙旅行は一泊1億円超!「宇宙の歩き方」出版(LivedoorNews)

国際宇宙ステーションISS)滞在は一人当たり約22億円、宇宙ホテルの宿泊は将来1億1千万円、といった具合に宇宙旅行のハウツーを旅行ガイドブック風にまとめていて、話題を呼んでいる。」

憲法の22条1項をご覧下さい。

第22条〔居住・移転・職業選択の自由,外国移住・国籍離脱の自由〕

「何人も,公共の福祉に反しない限り,居住,移転及び職業選択の
自由を有する。(以下略)」

あなたは牧場のオーナーです。

大きな牛たちは乳を出し、肉となり、あなたの家族が豊かでいることを保障してくれています。

ただしそれはあなたの牛たちが、あなたの牧場の中に留まっていてくれることが前提であることはいうまでもありません。

また乳牛から急に「私は果たして人に乳を飲ませるために生まれてきたのか疑問だ。私には美しい声がある」などと言い出されてもあなたの家族にとっては全くいい話ではありません。

そのためあなたは牧場の周辺を柵で囲い、乳牛には乳牛、食肉牛には食肉牛の仕事以外は許さず、そもそも牛が牛以外の存在になろうとしていたとしても「おまえはしょせん牛である」と言い渡しておく必要があります。

それが農民達を土地に縛り、関所をつくることで彼らに移動の自由を許さず、農民が他の身分になろうとすることを士農工商という身分制度により許さなかった江戸時代の社会システムです。

それは人を物体として扱った奴隷制度から一歩進展はしているものの、人の尊厳を十分開花させない世の中でした。

それほどにあなたやわたしにとって、移動が出来る自由とは精神面の進展に寄与する権利であるといえます。

貨幣を活発にやりとりすることで社会基盤を増築していく資本主義社会という仕組みを取り入れることが遅れたわたしたちの国では、欧米と違い、移動の自由をあえて明文で明記する必要がありました。

移動できることの意義が、資本主義に、また精神活動に対して如何に重要な要素なのかが制御する側にも制御される側にも、理解されていなかったのです。

そしてそれをわたしたちに知らしめる条文こそ、憲法22条1項、「居住・移転の自由」であり、移動の自由の本旨は私たちの意識に新しい規定をもたらすところにこそあるといえます(私見)。

今日、半分冗談でもありながら、宇宙旅行に関するガイドブックを手にする日を迎え、いよいよわたしたちは育った星の青さを本や映像でなくこの目で確認できる日を射程距離内に収めています。

地上にいる全員を宇宙から俯瞰するとき、わたしたちはきっと新しい哲学を手に入れることでしょう。
 

 
法理メール?