機長は従わないパイロットをその場でクビにした

衆院解散、9.11総選挙 抗議の農相罷免 (産経新聞)

小泉純一郎首相は「国民の信を問う」と決断、直ちに臨時閣議を開き衆議院の解散を決定。署名を拒否した島村宜伸農相を罷免した。」

憲法の68条第2項をご覧下さい。

第68条〔国務大臣の任免〕

「2 内閣総理大臣は,任意に国務大臣を罷免することができる。」

帝国憲法が支配した時代、私たちの国の総理大臣は、グループの中の代表的存在でしかなく、勝手に大臣を首にするなどの権限は与えられていませんでした。

いわば戦前の首相は、SMAPにおける仲居くんのような存在でしかなかったのです。

なぜそうなっていたのかといえば、首相を含めた内閣というグループを、更に壇上から見下ろす階層があったからです。

それは陸海軍の大臣たちです。

結局、戦争に負けるまでの私たちの国の舵取りは、拳銃を懐に入れた軍部の人たちの意向に逆らうことはできませんでした。

その後私たちは連合軍との殺し合いに負け、それが逆に幸いして拳銃を持った人たちを壇上から降ろすことに成功しました。

しかしその結果、「陸海軍大臣でなければ、いったい誰が国家の舵取りの責任をとるのだ?」という話になりました。

そこでその責任は内閣という集団に一体でとらせようということになりました。

しかし集団に連帯責任を取らせるためには、集団の意志がひとつにまとまっていたことが必要になります。

そこで総理大臣には、新憲法で大臣をクビにする権利までもが与えられ、内閣の意志の統一を乱す人には国の操縦室から出て行ってもらうことにしました。

私たちの乗る日本という飛行機は、操縦席に座る機長や副機長などを、その後ろのファーストクラスに座っている国会議員達が決めるというシステムで飛んでいます。

これを議院内閣制といいます。

機長(総理)が副機長(大臣)をクビにできるルールは、そのことで操縦室にいる全員(内閣)が、ファーストクラスの面々に対して一丸になって責任を取ることを実現化しますが、この連帯責任が担保だからこそ、国の操縦桿という大切なものは議院から内閣というたった十数人のグループに渡すことができるのです。

郵政解散をわたしたちは迎え、9月11日には、新しいファーストクラスに座る国会議員達を選ぶことになります。

些末な争論を捨象すれば、毎年40兆円の赤字を解消するため、公務員の給料40兆円を圧縮すべく小泉首相は郵便局を民営化しようとし、反対勢力はバックボーンである公務員の特権を保護しようとしているのが事の本質のように理解できます。

それについてジャンボジェットのエコノミークラスに座った私たちには、所属団体に左右されない、自らの意志で投票することだけが要求されています。
 

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