リベットも未来を予告する

ジーンズのカリスマ・デザイナー、山根英彦氏のこれから 1億6000万円脱税容疑で告発(ゲンダイ)
「国内より海外での評価が高い人物が、所得税法違反(脱税)容疑で告発された。エヴィスジーンズの製造販売会社「EVISU JAPAN」の山根英彦社長(46)だ。04年までの3年間で5億2000万円の所得を隠し、所得税法人税で約1億6000万円を免れていたとされる。 「ジーンズのロールスロイス」と呼ばれる世界的なブランドに育て上げた山根氏は、スキンヘッドで容貌魁偉な浪速の名物男。カジュアルショップ店員から独立し、大阪・北区でエヴィスブランドのジーンズ生産を始めたのは91年だった。 「彼は今風にいえばカリスマ店員。新しいジーンズをはくと、今までのものと微妙にはき心地が違う(悪い)。ならば自分が好きな、昔風のゴワゴワしたジーンズを作ろうということで誕生したのがエヴィスなのです」(アパレル業者) 」

法人税法の第132条をご覧下さい。

第132条(同族会社等の行為又は計算の否認)

「税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。(以下略)」 

納税者の仮装・隠蔽行為のことを「租税回避行為」といい、こうした行為だと認定されればそれは節税の域を超えて脱税と呼ばれます。

それが租税回避行為だとなれば法人税法第132条等が発動されます。

しかしこの132条、いつどのような要件で発動になるのかは税理士であろうともよくわからないのだといわれます。

憲法の租税法律主義、つまり課税要件の法定を意に介さないような飛び道具、132条が設置されているのはどのような理由からなのでしょうか。

そもそも会社は商法では営利を目的とする社団であると定義されています。

それがどんな意味を持つのかと言えば、個人とは異なり、仕事とプライベートが混在していない存在だと見られることになるのです。

存在の全てが営利にかかわると看做される以上、どこかに無利息で融資したなどという親告を税務署は鵜呑みにしなくなります。

営利活動集団である以上、そこにはかならず利益があったはずだと判断され、課税されてしまうのです。

132条は、少数の同族関係者で支配されているような同族会社に対し、本来個人とは別の会社でありながら、個人の支配力を考慮し、不合理な行為が申告された場合に税務署が通常行為を想定して課税できることを定めています。

日本の会社の95%は同族会社だと言われますので、会社の屋根が個人の蓄財の笠に使われる可能性は十分高く、132条はこのようなときのために大きな自由度を確保されているようです(以上参照:日本の税金 三木義一 岩波新書)。

大阪から代官山に出店し、501の大戦モデルをデフォルメしたエビスジーンズはアメリカ文化に敏感なヨーロッパの人々にも受け入れました。

ところで極個人的な話で恐縮ですが、私がその初期の頃に買ったエビスジーンズは、リベットがとれてしまったことがありました。

いろいろなショップがビンテージデニムのレプリカを作り始めた時代であり、きっとまだ生産ラインが不慣れな初期のイレギュラー品だったのだと思います。

しかしジーンズにとってリベットとはその由来上、帆布を作業用パンツに転換したもっとも要の部品であり、正直驚いたのを憶えています。

世間でどんどん評判になり、海外のミュージシャンも着用し、欧州へ出店する大進撃とは別に、単なる一古着好きとしてはその後エビスジーンズを買うことはありませんでした。

衣料業界の雄のさらなる活躍を願い、あの日の出来事が今日のニュースを予言したものではなかったことを祈っています。

 

 

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