下北沢にまんまと更地を出現させよう

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下北沢駅周辺では、小田急線の連続立体交差事業が進行中で、2013年に地下化される予定。この事業によって、1946年に都市計画決定された補助54号線の道路計画が再浮上した。」

連立要綱の第1条をご覧下さい。

都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する要綱

第1条(目的)

「この要綱は、都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関し、事業の施行方法、費用負担方法、その他必要な事項を定めることにより連続立体交差化を促進し、もって都市交通の安全化と円滑化を図り、都市の健全な発展に寄与することを目的とする。」

連続立体交差事業とは、鉄道の一定区間を高架化あるいは地下化することをいいます。

それは踏切をなくし交通渋滞や駅周辺の流れの渋滞を解消しようという複合事業です。

「都市における道路と鉄道の連続立体交差化に関する要綱」及び「~細目要綱」、通称、連立要綱は、その連続立体交差事業において、だれがどれだけお金を出すのかを取り決めていますが、それによればその費用のほぼ85%が公費から支出されることになっています。

つまり下北沢に集まる路線で営業する小田急は、費用の約15%を出すだけで、地上に新たに現れる自社の更地を一大商業施設に作り替えることが可能になります。

あとは国や東京都が出してくれるからです。

下北沢一帯を、一事業者である小田急だけに費用を負わせることなく、連続立体交差事業に公金が投入されるのには一応の理屈が通っています。

同時にそれは路線という莫大な土地を所有する鉄道事業者だけにあたえられた、理論的には反論ができないインセンティブでもあるといえそうです。

かつてマクドナルドの事実上の創始者レイ・クロックは、大学生達と歓談したとき、「私のビジネスはハンバーガーを売ることじゃない。不動産業だよ」という名言を残しています。

会社の経営戦略上のビジネスの基盤はハンバーガーを売ることでした。

しかし必ず店舗の立地条件のいい場所にしか出店しなかったマクドナルドは、レイクロックが買った土地の代金をフランチャイズ権を買った人に代わって支払ってもらうという裏側のビジネスモデルを構築していたからです。

かつて東急グループの創業者である五島慶太さんや、西武グループの創業者である堤康次郎さんたちも、戦後の焼け野原を次々と取得していったときにも、土地の副次利用性を見通していたに違いありません。

その執念は五島さんを”強盗慶太”、堤さんを”ピストル堤”という悪名をもって恐れさせたほどです。

単に鉄道屋をやりたいだけではなかったはずです。

結局ビジネスというコミュニケーションを底辺で信頼させるものが”都心の土地”という腕力であることは、いつの時代も変わりません。

しかもそれは、大規模にまとまれば連立要綱の第1条にいう「都市交通の安全化と円滑化を図り、都市の健全な発展に寄与することを目的とする」という美名の下、85%の工事費を公費から支出させるほどの「豪腕」にもなるのです。

 

 

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