伝統的粉飾決算と食卓のお父さん

[カネボウ粉飾]歴代幹部、組織的な裏金作りを継承(LivedoorNews)

「生み出された裏金は、以前は政治家への裏献金や総会屋対策に使われたとされる。最近では、粉飾決算に協力した会社への謝礼のほか、組合対策費に使われていたという。」

商法の第274条の3 第1項をご覧下さい。

第274条の3〔親会社の監査役の子会社に対する権限〕

「1 親会社の監査役は其の職務を行ふ為必要あるときは子会社に対し営業の報告を求め又は子会社の業務及財産の状況を調査することを得」

粉飾決算とは、実際は赤字なのに会社の決算でいかにも儲かっているように見えるよう、操作を加えてしまうことです。

そのことで株主に配当する事例が多く,債権者の利益が著しく害される危険があります。

私たちの商法と粉飾決算の戦いは古く、すでに40年間以上続いています。

昭和四九年には、既に子会社を利用した粉飾決算が頻発していたことを受けて、商法は監査役に子会社調査権を与えています。

しかしその時点での子会社調査権は多分に形骸的であったため、まだまだ子会社をつかった粉飾決算事件が続きました。

そこで平成11年、子会社調査権を更に実質的権力のあるものに改正したのが、274条の3 第1項、親会社の監査役による子会社に対する権限です。

しかしそれをもってしてもなお、私たちはカネボウという大会社で粉飾決算が伝統として続けられていたというニュースを今日聞くハメになっているのです。

粉飾決算は決してなくならないのだといいます。

そうだとすれば私たちの商法は、そろそろ監査する対象の会社から報酬を受け取る監査法人という存在に、前提としての信頼を与えうるのかどうかをそもそも考えるべき時期にさしかかっているかもしれません。

未曾有の粉飾決算を繰り返した米企業エンロンにあっては、超一流の会計監査会社アンダーセンが粉飾決算を黙認し、結果的にエンロンに出資したたくさんの人たちとその家族の人生を狂わせました。

企業の内部で粉飾決算を演じる人も、監査するべき職にありながら使命を貫けない人も、それぞれの人が自分の出来ることで家族を幸せにしようとがんばって生きています。

ただしその時、お父さんにはある種の覚悟が要求されます。

違法な稼ぎでテーブルにご飯を並べる時、「食べるためにはバレなければ何をしてもいいぞ」という暗黙のメッセージを、子供たちにゆっくり飲み込ませているのだという自覚です。

 

 

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