産業再生法認定と踏み台になる生存権

経産省、丸善に産業再生法を認定(goo)

「書店大手の丸善の2005年3月期連結決算は、主力の学術書売り上げが、国立大の独立行政法人化による買い控えなどで伸び悩み、税引き後利益は24億円の赤字だった。」

産業再生法の17条をご覧下さい。

産業活力再生特別措置法

第17条(課税の特例)

「認定事業再構築事業者、認定共同事業再編事業者若しくはその関係事業者又は認定経営資源再活用事業者のうち、特定施設撤去等を行うものとして主務大臣の確認を受けた法人が、認定計画に従って当該確認に係る特定施設撤去等を行った場合において、当該特定施設撤去等により欠損金を生じたときは、租税特別措置法の定めるところにより、法人税の還付について特別の措置を講ずる。」

産業再生法は、バブル崩壊で経済の生産性が低迷したため、特別措置として事業再構築や共同事業再編、経営資源再活用を円滑化するための措置を講じ、中小企業の活力の再生させようとする法律として立法されました(1条)。

もともとは2003年までで使えなくなる時限立法のはずでしたが、2003年に大幅な改正がなされ、現在も使用されています。

産業再生法の適用を受けるためには事業再構築計画を所管官庁に提出して認定を受ける必要があります(3条)。

ちなみにこの再構築という言葉こそ、リストラクチャリング(restructuring)すなわちリストラという言葉の語源です。

三菱自動車が提出した事業再構築計画は認定を受ける前に経済産業省に一度突っ返されています。

認定が通れば17条で課税の特例を受けるなど、国から金銭的な保護が与えられます。

しかしリストラが世間では首切りを意味していることからも明らかなように、産業再生法3条にいう再構築を企業が解釈するとき、それは経営の工夫の前に人員整理に勢い繋がりかねません。

その結果、法人という仮想の人格を生き長らえさせるために、産業再生法は法人を構成する現実の人間の生存権を脅かしているという一面があります。

またバブル崩壊といっても本業以外に投資した放蕩経営のつじつまが合わなくなってきた企業、あるいは取得原価主義会計制度下で数字の操作によって経営してきた企業が、より現実的な時価会計制度によって抜き差しならなくなったにすぎない場合なども多く、もともとそうした企業が必ずしも特例措置を受けたからといって思惑通りに再生できる保障もありません。

現実には経営に不安のない大企業によっても、税をくぐり抜けるために産業再生法が利用されているのではないかが疑われています。

法という文言が一度決められれば、その文言に状態が沿う限り法の約束は実行されます。

しかしもしそのことがあなたや私に、立法者の意図しない悲しみや不公平感をもたらす状態が続くならば、私たち自身によって法の文言に修正を加える必要があります。

憲法二一条に「集会、結社及び出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定められているのは、あなたと私の表現こそが民主制(一人一人が国の行き先を決めるシステム)を動かすガソリンだからにほかなりません。
 

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