メメント・モリと安部がいう

過剰摂取は有害の恐れ コエンザイムQ10東京新聞

食品衛生法の第4条をご覧下さい。

第4条

「この法律で食品とは、すべての飲食物をいう。ただし、薬事法に規定する医薬品及び医薬部外品は、これを含まない。」

食品衛生法の目的はその1条によれば、食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もつて国民の健康の保護を図ることとなっています。

食品衛生法の11条では、食品の製造や使用、保存方法についての基準や成分規格を定められるとし、その規格または基準に合わない食品、添加物に対する製造、使用、輸入、販売などの禁止しています。

これをもとに現実に動くのは、東京都の場合保健所になります。

たいして薬事法の目的は1条によれば、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うとともに、医療上特にその必要性が高い医薬品及び医療機器の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることとなっています。

薬事法の2条では医薬品や医薬部外品、化粧品などの定義を定めています。

これをもとに動くのは東京都の場合、薬事監視課になります。

さて医薬品ですが、薬事法で厳密な審査を受けて承認、許可されたもの以外は製造、販売を原則禁止されています。

これは憲法学で通常、警察的規制と呼ばれる性質の法律です。

一方、それが食品であるときはよりゆるやかな扱いとなり、性質に応じた規制のみが志向されています。

これは通常、政策的規制と呼ばれる性質のものです。

つまりもしその商品に薬事法にひっかかる成分が一切含まれていなければ、扱いは政策の範疇に入り、非常に業者まかせのゆるやかなものになるというわけです。

薬事法の定義次第で、同じく私たちの口に入るカプセルの扱いはキツくなったり、急に緩くなったりするわけです。

しかし食品の定義が、食品衛生法の4条で「医薬品でない全ての口に入るもの」とイチロー並の広い守備範囲を見せているため、コエンザイムQ10の監視は基本的にはゆるやかな保健所の仕事になっています。

同じ都の部署である以上、怪しげな商品に関してはちょっとくらいかぶっていても両部署が同時に動いてもよさそうなものですが、丹下健三の手による巨大な塔を見れば想像に難くないように、同じ庁舎の中でも従う法律系統が変わればそれぞれの部署が全く異なる視点で仕事をしています。

食品衛生法の広すぎる守備範囲は、限りなく薬品に近いサプリメントもキャッチしてしまい、食品には薬に用いられる薬効表現ができないことが、逆に混乱を招くような表現を用いる原因となり、普通にお勤め帰りに薬局に立ち寄るあなたや私のような消費者の体に不要なばかりか場合によっては有害な”食品”を先を争って購入する事態にもつながっています。

薬局に並んでしまえば食品であるとか医薬品であるとかは事実上わからないからです。

これがいわゆる縦割り行政の弊害と呼ばれる問題です。

この問題は過去、HIV薬害問題などで何度も大きくクローズアップされました。

しかし、庁の通達などによる局所的な手当以外、抜本的な改革は未だ成功していません。

この問題の解決にはあらゆる関係者や、また私たちひとりひとりの問題意識の継続が不可欠です。

そしてそれを突き動かしうるのが、HIV薬禍の際に私たちが見たのは単なる行政派閥の勝敗でなく、たくさんの人々の死だったという記憶への社会的再定義です。
 

 
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