金利という双頭の蛇が駅前を這う

エサの奪い合いも。頭を2つもつヘビ見つかる(朝日新聞)

出資法の5条2項をご覧下さい。

出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律

第5条(高金利の処罰)

「2 前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十九・二パーセントを超える割合による利息の契約をし、又はこれを超える割合による利息を受領したときは、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」

あなたが急に100万円が必要になり、他に当てもなく駅前の消費者金融に生まれて初めて飛び込んだとします。

簡単な審査を受けた後、あなたはキャッシング、すなわち不動産担保でも保証人担保でもなく、あなたの予定お給料というキャッシュを担保に消費者金融業者は喜んでお金を数百万円までかしてくれます。

このとき業者が選択する法律が通称、出資法です。

出資法はその利息の上限を年29.2%とし、これを上回る利息を取ったときは刑事罰を科しています。

一方、あなたは大学で「たしか利息制限法というで年利の上限は100万円で年15%だったような気がするのですが・・・」とおずおず聞いてみますと、お姉さんは、「ええ、けれど当社では出資法を順法していますので」とニッコリいわれます。

あなたはキャッシュ100万円と大きなクエスチョンマークを頭につけてお店を出ることになります。

たしかに利息制限法は1条1項で100万円借りたときの年利を15%、すなわち一年で15万円までしか利息をとってはいけないとしています。

対して出資法に従えば1年で約29万円、つまり利息制限法のおよそ倍額利息を支払うハメになります。

とはいえこの二つの法律、適用場面が異なるわけではなく、どちらもズバリ消費貸借契約、つまりあなたが駅前の消費者金融会社でお金を借りるときに適用されます。

ただし利息制限法の年利15%はあくまで民事の定めで、原則超過支払い分が無効になるという定めですが、任意に支払った利息は取り返せません(1条2項)。

対して出資法の年利29%は違反すれば刑事罰が課されます。

つまりあなたが納得済みで支払った利息が15%以上29%未満の間なら、民事的に許容可、刑事的にギリギリ不可罰というグレーゾーンが発生しています。

そして大手の消費者金融はすべてこのグレーゾーンを長年ビジネスチャンスとして活用しています。

グレーというからにはあなたにも勝機はあるわけで、ある日この二法の矛盾に道理として嫌気がさしたあなたは弁護士事務所を訪ねてみると、「うん、いままで支払った利息の年利15%以上は取り返せるよ」とあっさりいわれます。

現実に電話一本で過入金分が消費者金融会社から返済されてきました。

さてこの利息に関する利息制限法と出資取締法、なぜ司法はこのような双頭の蛇を消費貸借契約に関して放しているのでしょう。

司法の答えはこうです。

世の中には銀行などから全うに融資を受けられる状況にない人たちもたくさんいる。

仮に銀行と同じような利息を消費者金融業者に強制すれば、当然彼らは銀行との競争に勝てないため表に出なくなり、暴利と引き替えに世の中に十分な融資を提供するだろう。

だからブラックな金融業者ばかりにしないため、有る程度グレーゾーンを設けておく必要があるのだと。

つまりこのグレーゾーンがあればこそよのなかには闇金融が跋扈しないのだという大人の論理です。

さて私たちはここで世の中を司法の論理を離れて水平に眺めてみましょう。

本当に司法が期待したとおり世の中には暴利で苦しむ人たちは消えたのでしょうか。

どうも司法の大人の論理は思惑通りに進んでいないようなニュースを私たちは毎日読んでいます。

現実に出資法は当初年利40.004%を上限としていましたが、平成11年の商工ローン問題で利息制限法とのグレーゾーンが原因だと世の中から批判を浴び、上限金利を29.2%に書き換えています。

私は消費者金融業というものが世の中に対して持つ現実的効用というものを認めています。

国や、親兄弟、友達にどうしても助けてもらえない現実というものは存在しますし、貸すだけ貸して結局お金を返してもらえず倒産している消費者金融会社というものもお考え以上にあるのです。

しかしこの先、この利息の間隙に対しては法の別の手当が必要になると思っています。 蛇の頭の一方が知らぬふりを決め込んでいるからといって、もう一方の頭のもつ毒牙が刑事罰ギリギリまで鋭くてよいというのでは、そこの頭を突っ込むしかない立場になった人は我が身を呪うしかありません。

それではあまりに不条理だからです。
 

 
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