リコールという地方自治のホットライン

大阪市職員厚遇、市民団体が市長らの辞任要求(読売新聞)
「市への他の要求は<1>カラ残業に関与した局長・部長級職員の懲戒免職<2>ヤミ手当などに違法に投じた公金の全額返還――など。同実行委は今後、関市長のリコールも視野に集会を重ねる方針。」

地方自治法の80条1項をご覧ください。

第80条〔議員の解職請求・投票〕

「選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、所属の選挙区におけるその総数の三分の一以上の者の連署をもつて、その代表者から、普通地方公共団体選挙管理委員会に対し、当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職の請求をすることができる。(以下略)」

地方自治法は六法では法律の親玉、憲法の部に付されています。

なぜなら憲法15条が「公務員を選定し,及びこれを罷免することは,国民固有の権利である。」と定め、すべての公務員の地位の最後の最後の根拠は国民の意思に基づくものだという国民主権原理を明らかにしているためです(判例 最高裁大法廷 昭和24年4月20日)。

リコールとは地方の公職の地位にある人などを任期終了前に住民の発意でクビする制度で、これはもっとも直裁的な地方政治における直接民主制の現われといえます。

私たちの国は基本的に間接民主制で動いています。

それはその全ての実権を国民一人一人に本当に渡してしまうと、えてしてその場の感情で国の方向を操縦してしまい国益に即した合理的行動がとれなくなる可能性が心理工学的に高いからです。

この憂慮のことを衆愚政治とよびます。

古代ギリシャのポリスを衰退に追いやった政治システムの三大特徴が不平等選挙、奴隷制度、そして奴隷制を基礎にした直接民主制だったといいます。

しかし現代日本の巨大な政府に対しては、事実上直接民主制を実行することなどできず、ある種いやおうなく代表民主制をとっています。

地方においては一人一人の気持ちを直接反映させたほうが最終的に国の政治も健康な間接民主で駆動するという理念の下に、国から独立した人格を認められ自分達で事務を処理しますし(団体自治の原則)それは住民の意思と責任で行われます(住民自治の原則)。

この状態を憲法92条の言葉を使って「地方自治の本旨」と呼びます。

あなたの生きている世界において唯一あなたが暮らす地方の政治だけであなたの不満や志向する方向性を直接表現することが許されているのです。

あなたの地方公務員が謝罪すべき場面で大酒を食らっているときはこの直接表現権を行使しなければ、あなたが公務員の支配者だというのはお題目でしかなく、現実にはあなたは支配される側なのだと自ら進んで認めることになります。

 

 

法理メール?  * 発行人によるメールマガジンです。