国庫は条文で開け閉めする

旧五菱会ヤミ金融事件、検察側が控訴(日経新聞)

「検察側は15日、ヤミ金融などによる収益の没収・追徴を認めなかった東京地裁判決を不服として控訴した。」

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第13条7項2号をご覧ください。

第13条(犯罪収益等の没収等)

「2 前項各号に掲げる財産が犯罪被害財産であるときは、これを没収することができない。前項各号に掲げる財産の一部が犯罪被害財産である場合において、当該部分についても、同様とする。」

刑法において没収とは犯罪行為と関係のある一定の物を取り上げて国庫に帰属させる処分のこと、追徴は,没収できる物が没収できないとき,没収に代わり,その物の価額の納付を強制する処分のことをいいます。

犯罪被害財産は、国庫に一度入れると厳格な扱いを受け、被害者には戻せません。国に属する現金となって、同じお金が突然、非常に縛りの多い拡張定義をもつものになります。

組織的犯罪処罰法13条7項2号が没収処分を禁止するのも、国庫の非常に厳密な扱いを恐れてのことです。

もともと「国庫」という言葉は、昔の物騒な警察国家思想下で、アンタッチャブル・ゾーン的意味で用いられたのが出自です。

これがために、その流れを汲んで現在も非常に応用が効きづらいのかもしれません。

(もっとも国庫という巨大な金庫があるわけではなく、概念的には国家を、物理的には日本銀行を意味します。)

法が人を泣かせる時、その法を矯正するためには新しい法を待たなければなりません。

それほど融通が利かないからこそ、役立つものでもあるのですから。
 

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