「厚生労働省関東信越厚生局麻薬取締部は「使用を立証するには尿検査が一番の決め手」と話す。警視庁によると、吸引に使っていたとみられるパイプやストローの付着物のDNA型が酒井容疑者の型と一致した。しかし、DNA鑑定や毛髪鑑定では使用の時期が特定できず、公判維持は難しいという見方も。」
刑事訴訟法の256条2項をご覧下さい
第二百五十六条 2 起訴状には、左の事項を記載しなければならない。 一 被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項 二 公訴事実 三 罪名 |
わたしたちの刑事訴訟法は、検察が裁判所に審判の対象を限定し、被告人に対して防御の範囲を明示するために訴因の特定を要求しています(256条2項)
そしてもし訴因が特定性を欠くときは、裁判所は338条4号に基づいて公訴棄却判決を言い渡さなければなりません
訴因とは検察官が起訴状で審判を請求した犯罪事実を表示したものです
それをはっきり示されることで、被告人はその点についてだけ防御を行うことに集中できます
つまり訴因は当事者の攻撃・防御の対象なので、犯罪の日時や場所、方法をもって、できる限り特定して明示しなくてはならないのです
それがなければ、わたしやあなたが身に覚えのない罪を突きつけられ、壇上に並んだ裁判官と検察官によって裁かれる時代が再び戻ってくるかもしれません
つまり「日時はAでもBでもないけれど、ストローに付着痕跡があったので被告人が過去のいつかの日に使ったのは間違いない」と検察官が主張したとしても裁判所がこれを棄却することが、司法制度に一定の安全弁を装着しているとも言い換えられます
しかしながらわたしやあなたはいつもこうした司法の安全弁作用を目の前にするといつも不条理感に苛まれます
「それでも彼女はやったといっているのではないか」と
その通り、時に現司法は反社会的行為をその両手から意識的にこぼしてしまします
逆に言えば、司法にその両の手をより頑なに絞ることを許し始めたとき、わたしやあなたはまた大切な保障装置のひとつを手放すことになるのです