轍の深さは報いの所以

食事中の女性客を拉致し暴行、ステーキ店長ら逮捕…大阪(読売新聞)
「大阪・ミナミのステーキチェーン店「ペッパーランチ」心斎橋店で、食事中の20歳代の女性客を拉致し、乱暴するなどしたとして、大阪府警南署が、同店店長北山大輔(25)(泉佐野市)、店員三宅正信(25)(大阪市西成区)の両容疑者を強盗強姦(ごうかん)と逮捕監禁致傷の疑いで逮捕していたことがわかった。2人は「女性を囲っておくつもりだった」と供述しているという。調べでは、北山容疑者らは9日午前0時20分ごろ、大阪市中央区心斎橋筋商店街近くにある同店で、閉店作業を装って店のシャッターを閉め、1人で食事中だった女性客を「逃げたら殺す」とスタンガンで脅し、無理やり睡眠薬を飲ませて泉佐野市内の貸しガレージまで車で連れ去って乱暴したうえ、5万5000円入りの財布を奪った疑い。当時、店内には他に客はいなかった。女性はその後も手足を縛られたままガレージに止めた車の中に監禁されていたが、同9時すぎ、自力で脱出して近所の人に助けを求めた。通報を受けた同署員が、事件後に再び出勤していた北山、三宅両容疑者を任意同行し、逮捕した。」

民法の715条1項をごらんください。

715条

「1 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」 

使用者責任とは、事業のために従業員を使用する会社は、従業員が事業の執行について第三者に加えた損害を賠償しなければならないという責任のことをいいます。

その責任を法人に負わせる根拠は、使用者は被用者を使って利益を得ているのであるから、損失もまた負担させるのが衡平に適するとする報償責任の考え方を基礎にして、代位責任とする説が通説です。

民法715条によって使用者が被用者の不法行為について責任を負うためには、被用者の行為が「その事業の執行について」なされたものでなければなりません。

従業員がやらかした行為が、事業の「執行について」にあたるかどうかについて、判例は行為の外観上職務の執行とみられる場合であるとする、いわゆる外形標準説を採用し、広く解するようになっています(大正15年10月13日判例)。[参照:有斐閣法律学小辞典 第4版]

企業が競争原理によって提供するビジネスは、社会にたくさんの幸福をもたらしてくれます。

同時に企業が社会に残す大きな轍は、その内輪の大きさゆえにしばしば社会へ甚だしい危険をもたらしているのも、また事実です。

一人一人の従業員には必ずしも損害を賠償する能力が十分でない反面、企業自体はその従業員を使用することで大きな果実を収穫している点を考慮して、この企業活動から生じる損害は、企業に賠償させるのが損害を受ける社会に対して公平であると考えられるのです。

そして使用者があらかじめ毎日の従業員の活動に対して負っている責任は、故意・過失がなくてもかぶってしまう、いわゆる無過失責任です。

不確定要素を多く隠した人間という存在を可能な限り取り入れることで、収益を可能な限り大きくしようという経営者なら、そこにつきまとう無過失という重い責任を皆理解しているはずです。

フランチャイズという、経営システムの複写によって収益を上げる形態を採用したステーキチェーン店の代表者には、責任も複写されて返ってくることになります。

 

 

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