都条例によるスカウトの禁止と定義の方法

なりたい職業に「キャバ嬢」がランクイン!?六本木ナイトワーク事情(六本木経済新聞)
「コストを抑え、いかに質の高い女の子を採用できるかがキャバクラ業界の生き抜く秘訣であり、リクルーティングは死活問題だ。そんな中で2005年4月、石原慎太郎東京都知事が提唱した「東京都迷惑防止条例改正条項」の施行によってキャバクラなどの店舗の客引きやビラ配布、スカウトが禁止された。雇用関係にかかわらず条例違反となり、罰金や懲役刑を科すといった取締りの強化は、ハローワークを行なう同社にとって追い風にもなっている。白幡さんは「誰もが楽しめる安全で健全な業界にしていきたい」と新たなナイトワーク業界を展望してくれた。」

東京都迷惑防止条例7条1項5号をご覧下さい。

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例

第7条(不当な客引行為等の禁止)

「何人も、公共の場所において、不特定の者に対し、次に掲げる行為をしてはならない。

五 人の性的好奇心に応じて人に接する役務(性的好奇心をそそるために人の通常衣服で隠されている下着又は身体に接触し、又は接触させる卑わいな役務を含む。以下同じ。)に従事するように勧誘すること。」 

石原都知事率いるところの東京都は、カラスだけでなく繁華街の浄化も標榜し、昭和37年に成立している”公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例”、通称「都迷惑防止条例」を改正しました。

これによって客引き等を全面的に禁止する全国に例を見ない厳しい内容の条例が新たに成立しています。

従来、客引き行為などには、風俗営業法が用意されていました。

しかし客引きをしていた人がお店とは関係ないと一旦言い出すと摘発が難しくなるといった問題点がありました。

そこで改正条例では、公共の場所でのキャバクラや性風俗店などへの客引きを禁止、また公安委員会が指定する区域内では客引き目的で客待ちをすること自体を禁止しています。

さらに条例はその9条で、行為者だけでなく、行為を命じたお店自体にも罰則を適用する、いわゆる両罰規定を用意しています。

本来刑法理論において犯罪を行うと観念されて構成要件が立てられているのは自然人であり、法人は観念外にあります。

しかしその原則を通すと、たとえば税法違反のような行政法の場合、自然人が処罰されたとしても脱税による利得を得た法人は処罰できないというおかしな結論に陥ります。

そこで自然人だけを罰したのでは結論のスワリが悪いとき、同時に法人自体にも罰を科せられるようにした条文、それが両罰規定です。[参照:自由国民社 図解による法律用語辞典]

記事によればキャバクラとは、「時間制の料金設定でキャバクラ嬢、ホステスと呼ばれる女性従業員(キャスト)が相席して接客を行い、会話を楽しみながら飲食できる店のことで、「キャバレー並の比較的安い料金で、クラブのサービスが受けられる」ことから名付けられた」場所だとのこと。

しかし同じ場所も都条例による解釈では「人の性的好奇心に応じて人に接する役務」に分類され、これに従事するように勧誘した人には8条4項5号をもって50万円以下の罰金が科されます。

しかも両罰規定9条がその法人にも同額の罰金刑を科していることから、都はスカウトマンだけを処罰するのでは結論のスワリが悪いのだと考えていることが推察されます。

キャバクラという場所に対する行政としての立場と現実に働く人やお客さんの間には、まず定義の点から大きな隔たりがあるようです。

 

 

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