ライブドア担当の港陽監査法人、自主解散を検討(讀賣新聞)
「港陽監査法人は、粉飾の疑いが持たれているライブドアの2004年9月期決算を承認している。自ら監査した決算が粉飾に問われ、信頼回復は難しいと判断したと見られる。すでに取引先の契約を順次、別の監査法人に移している模様だ。監査法人が解散を検討するという異例の事態で、改めて監査のあり方が厳しく問われると同時に、監査法人のあり方にも大きな波紋を広げることは必至だ。」
商法の94条をご覧下さい。
第94条〔解散事由〕 会社は左の事由に因りて解散す ① 存立時期の満了其の他定款に定めたる事由の発生 ② 総社員の同意 ③ 会社の合併 ④ 社員が1人と為りたること ⑤ 会社の破産 ⑥ 解散を命ずる裁判 |
あなたもわたしも、自然人ならば人はいつかは命を終えます。
これに対して法律上の人格、すなわち法人としての会社の場合、理論的にはいつまででも存命することが可能です。
いやむしろ法人とは、人の寿命などのリスクを利害関係人の為に回避する法技術であるのだとも一面でいえるでしょう。
しかしあまり知られていませんが、構成員の集合的意思により、会社は何時でも解散することができると商法では定められています。
清算がすべて結了すると清算結了の登記を行い、会社の一生はこれによって消滅します。
ところで監査法人とは、財務書類の監査又は証明をする業務を組織的に行ため、公認会計士が共同で設立する法人のことです。
それは昭和 30年代の終わり、公認会計士が虚偽の監査証明をした事例の頻発を受け、公認会計士法の昭和41年の改正により新設されたものです。(参照:法律学小辞典 有斐閣)
その社員は公認会計士に限られ、社員の数は5人以上、組織形態は合名会社に類似します。
合名会社とは、社員全員が会社債務に直接連帯無限責任を負う構成員の個性が前面に出た会社のことです。
それだけに、個々の社員の人的信用が重んじられ、対内的にも、各社員間に、密接な信頼関係を必要とします。
信頼関係の必要は、ある社員の代表行為に基づく責任を各社員が連帯して負担する結果、合名会社なら他の社員が無限に負担しなければならないこととなる点を考えれば当然のことだといえます。(参照:自由国民社 図解による法律用語辞典)
あたかもエンロンにおける粉飾決算事件を鏡写しにするように、またも監査法人による不正が明るみに出、会計士個々人の信用と、構成員間の信頼関係を失ったひとつの監査法人が自主的に解散しようとしています。
約40年前に公認会計士法が手を打った監査法人というシステムも、古めかしいテーゼの前には無力化することを40年たって再び証明しました。
モンテスキューが著書『法の精神』の中で看破した、あなたもわたしも、”人間は権力を与えられればそれを必ず濫用する”というテーゼです。