HPに対する担保権設定と銀行の未来

銀行、新たな商品開発 HPや小説を担保 ベンチャー向け融資加速(goo)
日本政策投資銀行が先行するのは、企業が運営するホームページを担保とした融資。不動産ネットオークションサイトや介護関連の資格情報サイトを担保に、これまで五社のベンチャー企業に資金を貸し付けた。融資の際にはホームページが生み出す収益をもとに、アドレスや商標などの価値を算定。返済が滞った場合はホームページの運営権を売却できる権利などを確保したうえで融資する。ネット系企業にはホームページだけが資産という会社も多いが、「特定ジャンルで高いシェアを持つホームページなら担保としての価値が十分ある」(新産業創造部)という。」

民事執行法の193条第1項をご覧下さい。

第193条(債権及びその他の財産権についての担保権の実行の要件等)

「1 第143条に規定する債権及び第167条第1項に規定する財産権を目的とする担保権の実行は、担保権の存在を証する文書が提出されたときに限り、開始する。(以下略)」 

お金を貸した人は、借りた人から素直にお金を返してもらえれば問題ありません。

しかし借りた人がなんらかの事情でこれを返せなくなったときには、貸した人は債権の効力として借りた人の一般財産に対して執行をなし、これをもって債権の弁済に充てうるのが通例です。

民法債権者代位権と債権者取消権という二つの制度をもって、債務者の一般財産が漏れてしまうことを防止しようとしています。

つまり最終的にすべての債権は、原則的に債務者の一般財産によって担保されるということです。

しかし民法は、事業者がA銀行だけでなく、Bローンや C金融からもお金を借りてビジネスをしていたとき、その一般財産に対する債権の効力は、 AもBもCも皆平等なのだということにしています。

これを債権者平等の原則といいます。

ところでここにひとつ問題があります。

債権者が皆平等に一般財産にかかっていけるなら、最初の A銀行だけでなく、BローンもC金融も債権者平等の原則を当てにしてどんどん債権を成立させてしまうことになるのです。

そこでA銀行は、債権者平等原則の傘の外にある何かを確保しておく必要があります。

担保制度とは真の意味において、そこにこそその必要性が存在しているのだといえます。(参照:新訂 担保物権法 我妻栄 岩波書店

民事執行法第193条は、不動産及び債権その他の財産権に対する担保権の実行としての競売は、債権債務関係のややこしい書類一式を出さずとも、担保権者が担保権の存在を証する文書を提出したときに開始されるのだとしています。

これは担保制度を実行手続面でさらに援護し、たくさんの債権者たちを自由取引へ招待している条文だともいえます(私見)。

銀行がインターネットのホームページや出版予定の小説を担保にして融資を実行しているというニュースが流れ、日本の実体経済は一見その自由度を広げているようです。

果たしてそれが本当に担保の枠組みの進化なか、あるいは単に現在市場に余剰しているお金を回すため銀行がとった、かつての対処療法と同じなのかは、時間が経ってみないと誰にもわかりません。


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