「姉歯シンドローム」は、日本でいつから始まっていたのか?

衆院国交委でヒューザー・小嶋社長が逆ギレ“ふざけんじゃねえよ!”(サンスポ)
「小嶋社長のイラ立ちは、国交省にも向けられた。同省の資料に「ヒューザーから『勝手に動くな』と(複数の関係業者に)指示」と記されている意味を委員から問われると、「国交省もいい加減にしてほしいですね、まったく!!」と大声でキレまくり。」

住宅品質確保促進法の第87条をご覧下さい。

第87条(住宅の新築工事の請負人の瑕疵担保責任の特例)

「住宅を新築する建設工事の請負契約においては、請負人は、注文者に引き渡した時から十年間、住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものの瑕疵について、民法第六百三十四条第一項 及び第二項 前段に規定する担保の責任を負う。」

瑕疵担保責任とは、売買の目的物に隠れた欠陥がある時に,売主が買主に対して負う担保責任のことです。

隠れた瑕疵というのは、普通人が発見できないような欠陥、つまり通常その物がもつ性質を欠くことをいうとされます。

民法の634条が請負契約全般においてこれがあったときの瑕疵の修補、または損害賠償の請求を認めています。

住宅品質確保促進法は5年前の2000年、それまで2年しかなかった住宅建設契約における瑕疵担保責任追求の幅を10年と義務化したことを目玉に新設された法律です。

逆に言えばその立法は、建築物を巡る手抜き工事の問題が、既に2000年より前にあってもだらしなくひろがっていたことを証明しています。

建設という契約は各種の業者と大勢の人間に大きな食いぶちをもたらしますが、そのために一旦問題が噴出すればその責任の所在がどこにあるのかを特定する場合に困難を伴う事態の不可逆性に覆われています。

このため民法も一旦建物ができあがってしまえば、その重大性を根拠に契約の解除を認めていません(民法641条)。

わたしたちは”メイドインジャパンは世界で一番優秀な製品なのだ”と教えられて育ちました。

”その職人気質が利益を度外視しても不良品を作ることを許させないのだ”と。

しかしその伝説は、”もとをたどればその仕事がどの職人のものかを特定できた”からこそ生まれており、そのことを誇りと呼んだはずです。

できあがってしまえば全ての仕事がコンクリートに覆われてしまうことになるマンションや住宅にあって、姉歯シンドロームとでも呼べそうな”プロフェッショナルたちの確信犯的搾取”は、いったいいつ頃から始まっていたのでしょう。

わたしたちは、阪神淡路大震災時に倒壊していった建物や高速道路に、こういった問題が一切埋め込まれていなかったといいきれるのでしょうか。

鉄筋の本数や太さを誤魔化すことで得られた不当利得は、従業員のボーナスやゴルフ場や夜の街や、ひょっとして国会議員へも浸透していったのでしょうか。

そのツケを不良物件にローンを組んでしまった購入者が負わなければならないのなら、”職人の誇り”の意義を今一度定義しなおさなければなりません。

建設業界は国家や個人の予算を引き込むために極特殊なロジックを用いて、購入者を危険に陥れてしまう結果を生むほど自己増殖を続けているのではないでしょうか。

”責任を遡求的に追及されない限り真っ当な仕事はしない”というのなら、その人は職人とは本来呼ばれないはずです。

アスリートは不調になれば、自分が好調だった頃のフォームをビデオで何回もチェックするといいます。

”メイド・イン・ジャパン”とはどういう仕組みがつくってきた神話だったのか、わたしたちはそれを改めて確認すべき季節を迎えています。

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