貸金業者の判決回避は金の卵の買取価格

判決目前、貸金業者が「白旗」 敗訴逃れと借り手側批判(朝日新聞)
「一定金額内で何度も借り入れと返済ができるリボルビング払い契約を無人契約機で結んだ佐賀県の女性が、「説明なく不当な利息を払わされた」として消費者金融三洋信販」(福岡市)に過払い分の約34万円の返還を求めた。二審で逆転敗訴した女性が上告、最高裁第一小法廷(横尾和子裁判長)は7月、弁論を開くことを決めた。上告棄却の場合には開く必要のない弁論が開かれたことで、三洋信販勝訴の二審判決が覆る可能性が高まっていた。」

民事訴訟法の第87条をご覧下さい。

第87条(口頭弁論の必要性)

「当事者は,訴訟について,裁判所において口頭弁論をしなければ
ならない。(以下略)」 

上告とは、裁判所の判断に納得できない当事者に更に主張の機会を与え、司法への信頼を損なわないようにしている制度です。

それは同時に、法令の解釈適用が各裁判所の間で統一されることを目的にもしているので、上告審が出した結論には重みがあります。

上告審は、上告を認容する場合、原則に戻って必ず口頭弁論を開かなければなりません。

それが87条、必要的口頭弁論の原則というものです。

必要的口頭弁論の原則とは、必ず口頭で弁論させるという形式面だけでなく、その裁判の基礎は口頭弁論で述べられたか、そこに顕れたものに限るという実質面をも内容とするものです。

それは手続面は裁判所が主導する一方、事案の解明に必要な資料の提供などは当事者が主導することにより、誰が見ても適正な結論を導こうとするとともに、無駄に裁判書の機能を浪費しないことを目指す民事訴訟制度全体のためのものです。

口頭弁論が裁判所で採用されることは、誰もが権利義務関係の終局的判定に納得するためのものなのです。

三宅坂にある美しい建物、最高裁には実は毎日大変な量の上告理由書が、キャスターに山積みにされて全国から運ばれてきます。

そしてそのほとんどの記載された上告理由が、最高裁が本来扱うべき「憲法違反か絶対的上告理由」にはあたらないものであり、最高裁はそれらを「決定」で毎日どんどんどんどん却下していかなければなりません。

それらをかきわけて、最高裁のテーブルが一冊の上告理由書のために開けられるチャンスは非常に限られているのが現実です。

今回、消費者金融の利息についての争いについて、あの忙しい最高裁が弁論を決定したのは、「そこには最高裁が扱うべき非常に重要な論点がある」と判断したことを表現しています。

消費者金融側にとって、もっとも司法判断を下されたくない「利息のグレーゾーン」という金の卵を、和解によって守ることが出来たのなら、こんな安い買い物はなかったに違い有りません。


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