シャングリラの住所は雲南省麗江

白川郷で国際フォーラム 世界遺産10周年(読売新聞)
「海外から招かれるのは、古代仏教遺跡群で有名な「アフガニスタンバーミヤン渓谷」、少数民族の建造物が多く残る「中国・麗江」、11世紀の僧院が残る「フランス・サンテミリオン」、石積みのとんがり屋根家屋の「イタリア・アルベロベッロ」、ルソン島北部の広大な棚田群の「フィリピン・コルディリェーラ」の各世界遺産を抱える地元の県知事や市長ら5人。」

世界遺産条約の1条2号をご覧下さい。

世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約
第一条
「この条約の適用上、「文化遺産」とは、次のものをいう。
 建造物群
 独立し又は連続した建造物の群であって、その建築様式、均質性又は景観内の
 位置のために、歴史上、芸術上又は学術上顕著な普遍的価値を有するもの」

中国の雲南省麗江市は1997年に、中国で初めてユネスコ世界文化遺産に登録されました。

ユネスコのホームページによれば、世界遺産とは「現代を生きる世界のすべての人びとが共有し、未来の世代に引き継いでいくべき人類共通の宝物のこと」なのだそうです。

世界遺産には文化遺産、自然遺産、そして複合遺産の三つがあり、1条が文化遺産を、2条が自然遺産を定義しています。

世界遺産条約は、文化遺産や自然遺産のなかには人類全体にとって非常に重要なものがあり、集団的な援助を供与することを目的に1972年に採択されています(前文)。

かつてイギリスの作家、ジェームス・ヒルトンは小説「失われた地平線」のなかで空想の理想郷、シャングリラを描きました。

それは単に「チベットのどこかにある」とだけされた、あくまで想像の桃源郷でしたが、後に雲南省人民政府は、麗江近くをシャングリラのモデルであると発表しています。

さてあなたや私が桃源郷と呼ばれる究極の都市にたどり着くには、常にそういった山奥や高地に分け入らなければならないのでしょうか。

いつも、どこかそっと神が隠した場所を探し回るのは生産性が悪すぎますので、私たちはなんとか技術や法律を発展させてシャングリラを地力で築いていかなければなりません。

しかしイギリスで起こった産業革命は、私たちに便利な乗り物や機械をもたらしてくれましたが、反面、自活していた農民は全て給料で生活する労働者という階級に詰め込まれました。

また物理学の天才がもたらした核融合の技術は大量のエネルギーを経済社会にもたらしてくれましたが、同じ原理が武装していなかった市民数十万人を水蒸気に変えてしまいました。

わたしたちが自分達の住むその場所を技術革新や法改正を繰り返しながらよりシャングリラに近づけてきたのは、技術や法律そのもののおかげだったわけではありません。

それらをオールにして私たちにボートを漕がせたのは、理想の社会という向こう岸にたどり着こうとするまずイメージの力だったはずです。

この時いたずらにオールの改良ばかりに没頭するのは、再びボートをあらぬ方向に進ませかねません。

世界遺産条約が人類全体の文化遺産や自然遺産を残そうと尽力するのも、私やあなたがこれから描くべき真っ当なイメージの源泉として、それらの美が不可欠だからにほかなりません。

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