バイラルCMとウロボロスの蛇

'Viral' advertising spreads through marketing plans(USAtoday)

「Viral is today's electronic equivalent of old-fashioned word of mouth. 」
(私訳 バイラルCMは現代の電子的口コミだ)

放送と青少年に関する委員会」運営規則の第2条第1項をご覧下さい。

第2条(委員会の機能)

放送と青少年に関する委員会」の主な機能は、次に挙げるものとする。
(1) 視聴者から寄せられた放送と青少年に関する意見について審議し、寄せられた意見および委員会の見解を、機構の構成員である日本放送協会、(社)日本民間放送連盟および同加盟社に連絡するとともに公表し、放送事業者の自主的検討を要請する。その検討結果または具体的対応についての報告を求め、これを公表する。 」

バイラルCMとは、過激、または直接的内容のコマーシャル、あるいは友達の意見のような率直な内容のコマーシャルをインターネット上に動画で置いておき、TVのCMによってその置き場所(インターネットアドレスなど)を通知する手法です。

「このCMの続きはネットで!」というやつです。

バイラルCMは、BPOのような自主的な放送規制やあるいは時間的規制の枠外の表現を伝達し、顧客を獲得しようとします。

BPOとはNHKと民放連により、放送内容の自主規制組織として構成されている放送倫理・番組向上機構の略称で、その性質はいわば国家による内容修正等の前に、あらかじめ自分達の手で修正手段を確保しておくことで、権力から放送の自主性を隔離しようとするものです。

BPO内部には放送番組全般に関する諸問題を扱う放送番組委員会、放送と人権等権利に関する委員会であるBRC、そして性や暴力など、番組内容の青少年に与える影響を検討する放送と青少年に関する委員会の三つが内包されています。

BPO加盟の放送局は、各委員会から放送倫理上の問題を指摘されたら、改善取組状況を一定期間内に委員会に報告し、BPOはその報告を公表することになっています(2条)。

BPOの自主性、実効性には多分に問題点も指摘されているところですが、なんにせよ手ぶらで権力の前には立っていないという点に意義を見いだすことができます。

内実はともかく、放送局はCMで「BPOという自主機構があります!」と国家に向けてアピールし続けることが重要なのでしょう。

バイラル(伝染)の道が太く早いのは、それがわたしたちが慣れ親しんだTVとは違ったコードで書かれているからです。

視聴者がこれまで見られなかったような内容のバイラルCMは、最初喉においしいに違い有りません。

しかしバイラルCMはこうした規制を迂回する側面が強調されすぎれば、放送の自由とその享受の自由を長期的には狭めていく可能性も含みます。

まるでウロボロスの蛇のように、バイラルCMの明日も、その内容倫理の自主規制次第であるというパラドックスを見せています。

法理メール?