天井の落ちたプールとわたしたちの責任

落下つり天井「振れ止め」なし、運営会社認める(読売新聞)
「大規模な「つり天井」に対し、国土交通省は2001年、耐震補強のため「振れ止め」を設置するよう通知していたが、同省の現地調査や宮城県警実況見分で現場から発見されず、もともと取り付けられていなかった疑いがあった。」

国土交通省が平成15年、関係機関に宛てた通知、国住指第2403号をご覧下さい。

大規模空間を持つ建築物の天井の崩落対策について

国住指 第2403号

「3. 天井裏スペースが大きく、吊ボルトの長さが長くなる等の天井にあっては、地震時に天井全体が大きく揺れ、周囲の壁等に衝突することが考えられる。この場合には、天井と構造体の固有周期に配慮しつつ、吊ボルト相互を補剛材で連結するなどにより、揺れを抑制することが必要である。」

国土交通省芸予地震での吊り天上落下事例を受けて平成13年、写真入りの大変わかりやすい調査報告を都道府県建築行政担当部長宛てに送付しています。

その内容としてはすでに「重量の大きい天井材については、体育館では天井裏スペースが大きいため吊ボルトの長さが長くなり、地震時に天井全体が大きく揺れやすい。従って、吊ボルトが長くなる場合には、吊ボルト相互を補剛材で連結することが必要である。」という決定的な指摘をしています。

この送付文章の言葉尻は「・・・参考となるものと考えられるので、送付する」というものです。

そしてその後再び起きた十勝沖地震による空港ターミナルビル等の天井落下を受け、国交省は平成15年に冒頭のような通知を関係各位に対してしています。

この文章もその言葉尻は「・・・下記のような対策の必要性が認められましたので、参考に送付いたします」とあります。

通知はそれを裸にすれば「行政からの連絡」ということにつきます。

すなわち上下関係による内部処理はともかく、それは一般には法律とは一線を画するものです。

しかし行政が公式文書をもって連絡した以上、通知があると通知内容の行為がその後は適法になるなど、ただの伝言とは違った一定の効果が認められています。

こうした意味で、通知は準法律行為的行政行為と呼ばれています。

屋根について建築基準法施行令の39条には、「風圧並びに地震その他の震動及び衝撃によつて脱落しないようにしなければならない」という漠然とした決まりしか書いてありません。

しかし調査により吊り天上の危険と対応策がわかったとき、立法や改正を待たずに国土交通省が「頼むぞ」という意味で送付するのが通知です(私見)。

芸予地震、十勝沖地震、そして今回の宮城沖地震により私たちは巨大な石膏ボードを3度落下させることを繰り返しました。

国交省からの通知だけでは、どうやら私たちには被害を未然に防ぐ力がないようです。

天井の度重なる落下事故は、私たちに次の段階のアクションを要請しています。

 

 

法理メール?  * 発行人によるメールマガジンです。