ラーメン店主の監禁傷害とフランチャイズシステム

監禁傷害:人気ラーメン店主に暴行の同業店主逮捕 警視庁

「同業の人気ラーメン店主を監禁、暴行してけがをさせたとして、警視庁中野署は12日、東京都大田区山王1、ラーメン店「秋葉家」経営、川島義雄容疑者(57)を逮捕監禁傷害容疑で逮捕し、同店従業員(48)を指名手配したと発表した。川島容疑者は「スープの味や経営のノウハウを教えてやったのにあいさつや謝礼もなく、痛めつけてやろうと思った」などと供述しているという。」

中小小売商業振興法第11条をご覧下さい。

第11条(特定連鎖化事業の運営の適正化)

「連鎖化事業であつて、当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるものを行う者は、当該特定連鎖化事業に加盟しようとする者と契約を締結しようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、あらかじめ、その者に対し、次の事項を記載した書面を交付し、その記載事項について説明をしなければならない。(以下略)」
 

中小小売商業振興法は中小小売商業の振興が目的ですが、その有効な手段として、連鎖化事業を位置づけており、その中にはフランチャイズ・システムも含まれます。

ここでフランチャイズ契約とは、本部が加盟店に食材の提供やその調理法のノウハウの開示などを高額な加盟料やロイヤリティと引き替えに履行する契約のことです。

加盟店の関係が上手く噛み合えさえすれば、本部にとっては意識の複製・拡張という非常に特殊かつ有利な商行為形態をとることができます。

いわば同時多発営業です。

しかし赤の他人に自分と同じ営業意識の複製・拡張を任せて収益を拡大する仕組みゆえ、一旦関係がこじれればそのトラブルは非常に根深いものに変質しやすいのも特徴です。

かつてフランチャイズの本部と加盟者との間での契約を巡るトラブルが頻発しましたし、現在もコンビニチェーンなどで紛争があります。

このため中小小売商業振興法施行規則の一部が改正になり、フランチャイズ本部の情報開示義務が強化されました。

これによって売り上げが説明と違い、予測以下でロイヤルティーの徴収に耐えられない、あるいは本部のサポートが全く得られないなどのトラブルを避けようとするものです。

またたとえばコンビニ本部にしてみても、フランチャイジー(加盟店)が勝手な営業をしてしまうなどによる本部イメージの損傷を避けられることになります。

これが中小小売商業振興法の11条において、フランチャイズ・システムを特に「特定連鎖化事業」と呼び、特にその運営の適正化を図っている背景です。

本部と加盟店の関係さえクリアな契約の下で上手く回れば、一つのアイディアと経験を多数関係者で共有して、一人では得ることのできないより大きな収益を上げられ、また加盟店もノウハウ不足の新規開店には避けられない余計なリスクを避けられる特定連鎖化事業フランチャイズシステム)は商行為におけるひとつの有効な知恵だといえます。

よって自分独自のアイディアと経験をもつと自負する経営者は、あいさつや謝礼がほしいなら、コンサルタントなどという生ぬるい肩書きを名乗らずに、中小小売商業振興法11条の下で明確な契約を結び、腹をくくってフランチャイザー(本部)になる覚悟を決めた方がよいでしょう。

意外な程個人レベルのフランチャイザーという人は存在します。

少なくとも腕力では我田に引水できないのが、収益という社会的評価です。 
 

 
法理メール?