シェアウェアに潜ませたトロイの木馬と芸術家の定義

Vectorがシェアウェア「Vocal Cancel」の公開停止、トロイの木馬と確認インプレス

不正アクセス禁止法の3条1項をご覧下さい。

不正アクセス行為の禁止等に関する法律

第三条(不正アクセス行為の禁止)

「何人も、不正アクセス行為をしてはならない。
2 前項に規定する不正アクセス行為とは、次の各号の一に該当する行為をいう。  
一 アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為。(以下略)」 

トロイの木馬は、かつて有名なギリシア神話でした。

トロイの王子に王妃を奪われたギリシア軍が、堅牢なトロイの城に思うように攻め入ることが出来ず残していった大きな木馬を、トロイの兵が城内に持ち込んでしまったところ、その内部に隠れていたギリシア軍達が夜になって大挙木馬の内部から現れ、結局トロイが全滅させられたというお話です。

この話に見せられた少年がシュリーマンといい、彼はその話を真実だと信じました。

そこまではよく聞くお話ですが、なんとこのシュリーマン、「実際に遺跡を発掘する為には考古学者の収入では実現できない」と腹に決め、40代になるまでビジネスの世界に没頭、大成功を収めてから、今度は作った資金を全投入して、本気で土を掘り返す大作業をはじめさせました。

当然、ビジネスの周辺にいた友人達はもちろん、どかどかとなわばりに入り込まれたような気になった考古学者達も彼の行動を止めようとしたり、嘲笑したりしましたが、驚く無かれかつての少年シュリーマンは、本当に古代都市トロイを掘り出してしまいました。

発掘された堅牢なトロイの城壁の前に、神話といわれていたお話が一気に現実の口述記録だということになったのです。

シュリーマンにとっては周囲の雑音はどうでもよく、ただただ「トロイの城壁を見たかった」、それが彼の命の形だったのです。

さて話は変わってソフトウエアのトロイの木馬ですが、これは実行してしまうと、例えば勝手に海外にパソコンが電話をかけにいったりして高額な電話代を後で請求されることになる等、意図しない動きをパソコンに勝手にさせるもので、パソコンユーザにとってはもっとも被害が大きいタイプのウイルスです。

電子計算機の世話なしでは一切機能しない現代社会は、今回のようにプログラマの書き下ろすコードに黒い意思を紛れ込まされていると、あなたの銀行口座残高がいきなりゼロになる危険性をもっています。

一方で、かつてハッカー集団、Cult of the Dead Cow はウインドウズにいつでも侵入できるようにする、あり得ない程危険なプログラムを書いて世界を驚かせました。

しかしその創作にはどこかウインドウズコードを一切公表しようとしない世界制覇企業に対する地下抵抗組織のような面持ちさえあり、彼らの出るコンファレンスには世界中からたくさんの技術者が集まりましたし、彼らの一部は人権活動を繰り返したといわれます。

全てがコードに変換されようとしている現代、プログラマはよい神官にも悪い神官にもなりえます。

不正アクセス禁止法3条1項は事後的防衛ではありますが、情報詐取による社会の被害を最小限にとどめようとしています。

シュリーマンの一生は、どんな人も結局はその命を表現する芸術家であることを語っていました。

プログラマも、事後的な法規制以外に、自らの命の表現に対して内側から純度の高い問いかけができる能力が今後ますます要求されてきます。
 

 
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