解散:国王の報復

首相『廃案なら解散』 郵政法案(東京新聞)

小泉純一郎首相は一日夜、首相公邸で自民党武部勤幹事長、山崎拓衆院郵政民営化特別委員会筆頭理事らと会談した。出席者によると、首相は五日にも予定される郵政民営化関連法案の衆院本会議採決で法案が否決され、廃案となった場合の対応について「必ず衆院を解散する。(内閣)総辞職は全く考えていない」と述べ、衆院解散・総選挙に踏み切る意向を表明した。」

憲法7条をご覧下さい。

第7条〔天皇の国事行為〕

天皇は,内閣の助言と承認により,国民のために,左の国事に関する行為を行ふ。
① 憲法改正,法律,政令及び条約を公布すること。
② 国会を召集すること。
③ 衆議院を解散すること(以下略)。」 

解散とはせっかく選ばれた国会議員さんが全員クビにされる、本音の部分では議員さんにとって恐怖の制度で、衆議院にだけあります。

形式的には7条にある通り、天皇がこれを執り行いますが、この制度の実質的な決定権はだれにあるのかが憲法にはハッキリ書かれていないため、古くからこの点で学説の衝突があります。

通説は7条の「助言と承認」という文言を逆に遡って、内閣に解散の実質的決定権があると考えています。

これを通称、7条説と呼びます。

そもそも解散という制度は、なんだから知らないが議会という貴族の集団が現れ、一応勝手な政治ができなくなった国王が、報復的に行うものでした。

実際日本でも、戦争に負けるまで私たちが使っていた憲法7条には、「天皇帝国議会を召集し其の開会閉会停会及衆議院の解散を命す」とはっきりうたわれていました。

当時の日本では民意を反映させようという内閣などどれほどのものでもなく、内閣の壇上からは陸海軍大臣が見下ろしていたのです。

現代では解散には、解散から総選挙という手続をとることで国民の気持ちを意思を確認して議会を作り直すという民主主義的な意味があるといわれています。

よってその解散制度の目的や、また権力分立制、あるいは議院内閣制など、憲法が全体から表現する制度全体の構造・趣旨をもって内閣の解散権を認めるとする、いわゆる制度説によったとしても、結局は7条説と同じ目的を遂げられることになります。

私たちには、国会の紛糾に対して、運動会の父兄のように「赤勝て、白勝て!」とやることの前に、それが自分達の総意を汲んで運営されているのかを冷静に観察する態度が必要です。

もしこれを欠いたまま紅組と白組紛糾に口をはさむなら、運動会に参加している子供達(わたしたちの未来)は知らない間に先生達の思う通りの形に育てられることになります。
 

 
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