誤認逮捕:ウソの届け出少女らを虚偽告訴などで逮捕 埼玉(毎日新聞)
刑法の172条をご覧ください。
第172条〔虚偽告訴等〕 「人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で,虚偽の告訴,告発その他の申告をした者は,3月以上10年以下の懲役に処する。 」 |
刑法の一条一条のうしろには、それぞれが守る利益があります。
殺人罪なら命、窃盗罪なら財産です。
これを保護法益と呼びます。
刑法の条文をひとつひとつ裸にしていくと最後にはこの法益という芯が残ります。
保護法益は個人の利益、個人の集団としての社会の利益、そして集団の自治を委託した権力機関である国家の利益に大きく分けることができます。
これを法益三分説といいますが、それぞれの罪の法益がどこに入るのかは、そこから遡ることでどんな動作をしたらその法益を汚すことになるのかを決定しますので非常に重要な分析ということになります。
あなたは少女がやらかした虚偽告訴罪において、法益を何だとお感じになるのでしょう。
被害者が衆目の中逮捕されてしまうことを考えれば、当然それは個人法益だとお感じになるかもしれません。
しかし学説上の通説的見解は、この罪の第一次的保護法益は、国家審判作用の適正な運用に対する罪であると考えます。
つまり今回のように少女の戯れ言で国家(捜査機関)が痴態を演じてしまうことで、社会から司法警察に対する信頼が薄皮を剥くように徐々に剥がれていってしまうことのほうが重大だと考えるのです(私見)。
そして虚偽告訴罪を国家法益に入れて分析することによって、その罪の動作としては、特に今回のように男性が誤認逮捕されずとも、少女がそれを捜査官に告げた時点で既遂になることになります(判例)。
これが法益を分析することで罪の形がくっきりするという遡及作用です。
そしてあらかじめ罪の形が刑法にハッキリわかるように書いてあることが、私たちが不要に罪を犯してしまうことや、国家の気分次第で個人の行為が重罪になったり軽罪になったりする不当な扱いを避けることができます。
これが罪刑法定主義という名の、憲法が刑法に差し込むナイフです。
フォイエルバッハは、法益を犯す代償として大きな苦痛(罰)を用意することで私たちを犯罪から遠ざけることができると考えましたが、残念ながら今回の少女にはこの予定が作用しませんでした。
そもそも彼女にはまだ、自分が今何を話しているのかを把握する能力(分別)が備わっていなかったからです。
法理メール?