アキレス腱の名は幹部の私欲

潜水艦資料、中国に漏洩か 警視庁、防衛庁元幹部宅を捜索(産経新聞)

刑法の81条をご覧ください。

第3章 外患に関する罪

第81条〔外患誘致
「外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は,死刑に処する。」

本法は死刑しか選択肢がなく、刑法の中でこれ以上に重い罪はありません。

外患に関する罪は国民の祖国に対する裏切り行為を処罰する罪で、その保護法益は国家の対外的存立です。

もちろん当該防衛庁元幹部が直接この罪に問われることはありません。

おそらく自衛隊法59条(秘密を守る義務)違反程度しか問われないでしょう。

(118条によりその罰則は1年以下の態役又は3万円以下の罰金でしかありません。)

しかし国家の防衛力情報を、もっとも欲しがっている相手に漏洩する行為は刑法81条の立法趣旨が保護する法益を十分に侵害します。

なぜ一方では最重量刑の刑法81条があるのに実際に処罰するのは自衛隊法59条という非常に軽い罪になるのでしょうか。

それはその間を埋める法律、つまり一般諜報活動を取り締まる法律がないからです。

よく言われる「日本はスパイ天国」という状況を法律的に表現するとそういうことになります。

医師は日常的に人の生死を扱うことで手術に対してぞんざいになり、警察官は人の処罰を日常的に扱うことで一人一人の権利の扱いにぞんざいになる可能性があり、またイチイチ感傷的に手術や司法警察作用が停滞するという意味で意識的に業務扱いする必要もあるかもしれません。

しかし自衛隊幹部が日常的に扱う、しかも潜水艦という自衛にとってアキレス腱の情報は、「ついぞんざいになってしまった」では済まされない重要性を持ちます。

その情報は扱いを一度でも誤れば、未来というカンバスを赤く染めてしまう属性を持つのです。
 

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