国境:衰退する概念

クルド人家族は仮放免延長(共同通信)

出入国管理及び難民認定法、通称入管法の第24条をご覧ください。

第24条(退去強制)

次の各号のいずれかに該当する外国人については、次章に規定する手続により、本邦からの退去を強制することができる。
一 第三条の規定に違反して本邦に入つた者
二 入国審査官から上陸の許可等を受けないで本邦に上陸した者(以下略)

たとえば静岡県が、知事の許可を得ずに越境したとして、隣の愛知県人を静岡県から強制退去したら、あなたの胸の中にはどのような形の感情が現れるでしょうか。

海外との行き来が頻度を増すに付け、国家という区切りが幻想であることがあからさまになりはじめています。

たとえば北米のティワナという街において、その南では経済が借款のためとことん行き詰まり、北側にフェンスを越えれば世界最高の資本主義の実験場が待っているので、毎日命がけの国境越えの攻防が行われています。

地表上に人が引いた白線の前にたくさんの命が苦しんでいます。

区切り、縄張りというものがなぜ生まれるのか、それは自然発生的原理なのか、38度線はなぜ完全な直線なのか、地球の生命力が下り始めているときに国家という単位は絶対であっていいのかなど、入管法24条からは諸問題が透けて見えます。

すでに欧州においては通貨の統一が実行されました。

情報の世界においても、電話回線を伝って公平な情報という財貨の共有がおおまかにいって実現されはじめています。

ことによると、人は来るべき次の世界に対して共闘を無意識に準備しているのかもしれません。
 


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