文部科学省:相撲協会のタニマチ

朝青龍に条件付きで帰国容認へ(ニッカンスポーツ)
「モンゴルの日本大使館前で抗議集会が開かれ、監督官庁の文部科学省が事情説明を求めるなど、事は協会内の問題にはとどまらない。番付発表を1週間後に控えた秋場所に水を差しかねず、何より協会の自浄能力が問われるなど事態をこれ以上、師弟間の問題だけに放任できない状況に追い込まれたのも、帰国容認の背景にはあるようだ。」

法人税法の4条1項をごらんください。

第4条

「1 内国法人は、この法律により、法人税を納める義務がある。ただし、内国法人である公益法人等又は人格のない社団等については、収益事業を営む場合又は第84条第1項(退職年金等積立金の額の計算)に規定する退職年金業務等を行う場合に限る。」 

(以下参照:スポーツの法律相談 青林書院)

力士はそもそも、財団法人日本相撲協会の協会員です。

それは株式会杜で言えば会社と従業員のような立場になります。   

したがって力士は、所属する部屋との間ではなく、相撲協会と選手契約を締結していることとなります。

しかし力士は、プロ野球選手やJリーガー、ボクサーのような統一契約書により選手契約を交わしてはいません。

入門審査に合格し、力士として協会員となったことにより、相撲協会との選手契約が成立しているのです。

ではその契約内容はどこに書いてあるのかというと、相撲協会寄付行為細則に報酬などが定められています。

(たとえば横綱の月給は、その77条で、273万7千円と定められています。)

力士は、部屋との間に契約関係がなく、相撲協会との間に選手契約を結んでいるので、もし部屋を移転しても契約相手の変更という意味での移籍という問題が生じません。

親方が軽んじられるのだとすれば、法的にはそうした下地が影響しているのかもしれません。

なぜ相撲協会がそうした特殊な契約形態を採用しているのかといえば、相撲協会民法34条の規定する公益法人であるからです。

公益法人とはその名の通り営利を目的としない法人だとされます。

しかし世の中になんでも二重基準があるように、”付随的に”営利行為を行うことは公益法人であっても自由だとされます。

しかも公益法人は、法人税法上、収益事業以外が非課税になる、いわば特別優遇団体です。

そしてそれを根拠づけているのが、法人税法の4条1項です。

(そもそも収益事業の税率自体が、法人税法66条3項により一般の法人より優遇設定されています。)

このような特別優遇が約束される団体の設立には、主務官庁による許可が要求されます。

(そうでなければ一般の法人の間に納税の不公平感をもたらします。)

そして日本相撲協会におけるその主務官庁こそが、文部科学省ということになります。

つまりはもし、相撲協会内部に自身で拭えない構造上の問題を抱えているのだとしたら、彼らを公益法人として認可しつづけなければならない文科省のメンツこそが丸つぶれになる形なのです。

 

 

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