荒川静香さんの金メダルと、透明な器

荒川静香選手が金メダル(NHK)
トリノオリンピックフィギュアスケートの女子シングルで、荒川静香選手が金メダルを獲得しました。今大会、日本初のメダルで、フィギュアスケートでは日本選手として初の金メダルです。また、冬のオリンピックの日本女子の金メダリストは、1998年の長野大会のフリースタイルスキー女子モーグル里谷多英選手以来2人目です。また、この種目では、1992年のアルベールビル大会の伊藤みどり選手の銀メダル以来14年ぶりのメダル獲得です。」

国際スケート連盟の2004シングル・ペアスケーティングレギュレーション、第322条をご覧下さい。

ISU SPECIAL REGULATIONS SINGLE & PAIR SKATING 2004

Rule 322

Marking of single and pair short and free programs

1. Technical Score

a) Scale of Values

Below in f) is a Scale of Values Table of the elements of Single and Pair Skating which if necessary can be updated in ISU Communications. This Scale of Value contains Base Values of all the elements and adjustments for the quality of their execution.

私訳

「表Fに全要素の基礎点および調整点の要素採点表を明示する。ISUはこれを逐次改訂できる(以下略)」
 

2002年に行われたソルトレークオリンピックでは、フィギュアスケートに関し疑惑の採点が続出し、ついには日本人を含めて選手団が抗議文を提出する事態にまで至りました。

これをうけてフィギュアの採点方法は大幅に変更され、これまでの審判個人個人の採点の集積だった方法を否定。

技の要素を審議する審判団と技術の高さを審議する審判団がグループとしての採点を一選手ごとにまとめて行う方法が採用されることになりました。

採点競技にはどのような法を持ち込もうとも、潜在的にジャッジの主観がメダルの行方を左右してしまう要素を最終的に払拭しきれませんが、新採点法では採点表に基づいたジャッジの平均点を採用するため、少なくとも選手は合計点だけで自らの順位を追えることになりました。

ソルトレークの選手団の抗議文はより透明に近いルールを呼び出したのです。

女王の名にふさわしい堂々とした演技は、公正な新しい採点法の見つめる中でアジア人として初めての金メダルをもたらしました。

値千金のこの金メダルは荒川静香さんの才能と努力を証明すると同時に、採点競技は公正な容器(レギュレーション)が用意されてはじめて才能を公正に評価するのだという一面をも証明したかもしれません。