ダンサーと舞台袖の上演権

近藤良平の「コンドルズ」ツアー(朝日新聞)
「振付家・ダンサーの近藤良平が主宰し、学生服の男性ばかり十数人が踊るカンパニー「コンドルズ」が、27日から4都市を巡るツアー「TOP OF THE WORLD」を始める。コントあり人形劇あり、もちろんダンスあり。快テンポで笑いの絶えない90分間のステージにするという。 」

著作権法の第22条をご覧下さい。

第22条(上演権及び演奏権)

「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として上演し、又は演奏する権利を専有する。」

上演権とは、22条の文言によれば、公衆に直接見せ又は聞かせる目的で上演する著作者の権利ということになります。

これを演奏する権利と併せて、公演権と呼びます。

上演とは著作物を演ずることです(演奏行為は除かれます)。

かつてフランス人のバレエ振り付け師が振り付けた作品を、日本に呼ばれたロシアのキーロフバレエ団が無断で公演した際、著作権者の侵害回復の訴えに応じて東京地裁は「舞踊の著作物の上演については、実際に舞踊を演じたダンサーに限られず、当該上演を管理し、当該上演による営業上の利益を収受する者も、上演の主体である」と言い切って、海外パフォーマーの呼び屋等、収益を受ける物全体の責任も明言しました。

これを作品名にちなんで「アダージェット事件」と呼びます。

そこまで、上演という形で私たちをエンターテイメントしてくれる人達のアイディアは保護されています。

かつて勅使河原三郎という天才コリオグラファーは、整備される前の廃坑のような横浜、赤煉瓦倉庫にて、ガラスを足下で砕き割りながら、この世の物とは思えないような美しい舞踏を見せ、私はその映像の前に口がきけなくなるほどの衝撃を受けました。

エンターテイメントは単なる一時の慰めには収まらず、受容する側にパラダイムの転換を迫ることさえあるのです。

近藤良平さんというコリオグラファーの採るのは、観劇に来た人にコントや人形劇などまで提供して、とにかく楽しんで帰ってもらおうという方法論です。

エンターテイメントという行為は崇高なものからとくかくサービスに徹する物まで幅広くてよいわけですし、またそうあるべきなのです。

そして私たちはより優れたエンターテイメントに出会えることを願い、舞台袖にも著作権法22条をそっと立たせて、近藤さんという著作権者だけに彼の個性的な著作物の上演権を与えているのです。

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