銀行:最強の債務者

スキミング:「銀行、損失補填せよ」被害者、怒りあらわに(毎日新聞)

刑法163条の2をご覧ください。

第163条の2(支払用カード電磁的記録不正作出等)

「人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する電磁的記録であって、クレジットカードその他の代金又は料金の支払用のカードを構成するものを不正に作った者は、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。預貯金の引出用のカードを構成する電磁的記録を不正に作った者も、同様とする。

スキミングがあった場合、刑法上、つまり国家にお仕置きしてもらうことには障害がありません。

しかし口座からなくなった現金をどう取り戻すのか、すなわち民法上の処理が問題になります。

実は銀行は預金者である我々から見ると債務者でしかありません。

銀行は弱い債務を集めて、強い債権を作ることでゲインを生んでいます。

かつて民法学の我妻栄先生が、名著「近代法における債権の優越的地位」をもって、法理論上、いかにして債権が物権を優越していったのかを明らかにされました。

しかし理論はともかく、少なくともわたくしの知っている範囲の現実においてはお金を貸した人というのは借りた人より心理的に弱くなるのが常です。

ホテルニュージャパンを業火につつんだ横井英樹氏は相当の法律のマニアで、一旦手にしたお金、つまり債務はすべて自分のものと自身のなかで法解釈ができていたといい、実際に横井氏からはかえってこなかった債権がうなるほどあったのだと及び聞きます。

債務者はみずからの手でみずからのポケットからお金を差し出す義務しかなく、債権者である私たち預金者が銀行のポケットに手を入れたら窃盗罪になるのです。

銀行は債務者である、そしてそれは非常に強い立場である、現代においてはそう読み取れなくもありません。



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