「女性は独身で、事件の数日前、携帯電話でインターネットの医療相談掲示板におなかが大きくなりすぎておろせないなどと書き込み、山下容疑者が何度も同じような中絶をしたことがあるなどと持ち掛け、白衣で“執刀”したという。」
刑法の204条をご覧下さい。
第204条 「人の身体を傷害した者は,15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」 |
このように、被害者があらかじめ傷害や殺人に同意していた問題を「被害者の同意」問題と呼びます。
被害者の同意は、法益保護の必要性が外見上失われますので、被害者の個人的法益の保護を目的とした犯罪については少なくとも違法性の阻却される事由になります。
しかしたとえそれが個人の体や命に対する罪でも保護法益の重大性から被害者による個人的な処分など許さない場合があります。
傷害罪についても、明文で規定はありませんが公序良俗に反すれば同意があっても違法性は阻却されないとするのが通説です。
ただこの場合、堕胎手術の依頼という動機に、男がニセ医者だったという錯誤があり、これは真意にそわない重大な瑕疵といえるため、これにより錯誤による開腹手術への承諾は無効となり、結局、傷害罪は成立するものと考えられます。
麻酔をされていないことに気が付かないほど思い詰めた女性に素人手術をほどこして罪を問わないわけにはいかないのです。