毎日新聞のふるまいと日刊新聞法という結界

英語版サイトに「低俗」な日本紹介記事を掲載 毎日新聞がおわび(iza)
「閉鎖されたのは、毎日新聞英語版サイト「Mainichi Daily News」のなかの「WaiWai」と題したコーナー。「国内の週刊誌などの報道を引用し、日本の社会や風俗の一端を紹介」するとして、「日本政府は、防衛政策の広報のために小児性愛者向けの少女キャラクターを用い、『オタク』たちをひきつけようとしている」「日本の女子生徒は性的に乱れており、その一因はファストフードの食べすぎ」「高校入試を控えた息子を持つ日本の母親は、勉強前に息子と性的な行為に及ぶ」といった内容の英文記事が掲載されていた。このコーナーは2001年4月に開設され、1997年から同社の特別嘱託社員として勤務する外国人記者が主に執筆していた。」

日刊新聞特例法の第1条をご覧ください。

日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律

第1条(株式の譲渡制限等)

「一定の題号を用い時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社にあつては、定款をもつて、株式の譲受人を、その株式会社の事業に関係のある者に限ることができる。この場合には、株主が株式会社の事業に関係のない者であることとなつたときは、その株式を株式会社の事業に関係のある者に譲渡しなければならない旨をあわせて定めることができる。」

 

(以下参照:大塚将司 新聞の時代錯誤―朽ちる第四権力 東洋経済新報社

独禁法の適用除外や特殊指定とともに、新聞業界を守護する法的鎧として存在するのが日刊新聞特例法です。

それは商法の特例法であり、新聞社に株式の譲渡制限を認め、しかも株主を「新開事業に関わる者」に限定できるようにしています。

日本の商法は、わたしたちが戦争に敗れた後、GHQによる「株式が譲渡を制限されることは認めない」という意向を受けて、株式の完全自由売買を原則としています。

実は新聞業界はその時点までもその株式を限られた人たちの間にしか流通させないことを許されてきていました。

そこでもし戦後の商法改正で譲渡制限が禁止にされると、その結界が破れることになります。

そこで当時、『朝日』『読売』『毎日』『日経』の四社が全国の日刊紙へ呼びかけ、政界への働きかけを始め、特別に新聞業界だけ譲渡制限を残そうと動き出しました。

そしてそれにより生まれたのが、現在の日刊新聞特例法だというわけです。

しかしもともとなぜ新聞社に戦前から社内株式保有制度を認められていたのかといえば、自由な言論を多数の新聞社が行うことを快く思わなかった大政翼賛体制があったからでした。

戦前における新聞社の株式譲渡制限は、報道機関に対する管理システムであったのです。

つまりかつての外部のチェック機能を働きにくくしていた社内株式保有制度という構造は、政府という主が去った後、社内の人間による言論の私物化を導きやすくしています。

そもそも戦前の日本の新聞社も、結局編集権は経営権に勝ることができず、経営者が軍に屈すると新聞という言論が戦争を支持し続け、謝った報道をしつづけてしまった歴史がありました。

たとえ新聞を法的に社内株保有制度で守ったとしても、それは報道の自由を守る構造とはなり得なかったのです。

21世紀を迎え個人発のメディアも多様化、時に有力化し、大新聞が恐竜のように唯一無二な存在だった時代は終わろうとしています。

ただし国会の中を武装した人たちに歩まれないようにするためには、他に世情を知る術をもたない全国津々浦々の人たちの手にも渡る大新聞が、その存在意義を十全に果たさなければなりません。

そのためにも新聞がにいたずらに部数増加、アクセス至上主義に走り、過度な脚色の報道をするような事態は避けなければなりません。

かつて参議院議員羽仁五郎氏は大新聞の存在のさせ方について、「経営権、編集権、読者の真実を知る権利の三つを、最も正しい関係に配置しなければならない」と延べました。

しかしながら現代、手綱はもはやいかようにも新聞社任せであることを、毎日新聞社英文サイト事件はわたしやあなたに教えています。(私見)