皇帝はボーナスを手に去った

森世田谷区議が辞職 虚偽経歴で (iza)
「区民団体が6月下旬から議員辞職を求める署名を行っており、辞職が決まった3日には1万人を超える署名が森氏に手渡される予定だった。森氏には5~7月分の議員報酬(月額61万9000円)のほか、6月29日には夏のボーナス44万4287円が支給されている。区の規定で議員報酬は1日でも在籍すると、1カ月分全額が支給されることになっている。」

世田谷区議会議員の報酬及び費用弁償等に関する条例の、2条、3条、8条をごらんください。

第2条(抜粋)

「議員の報酬の額は、次のとおりとする。

議員 月額 619,000円」

第3条

「報酬は、議長、副議長、委員長及び副委員長にあっては、その選挙又は選任された当月分から、議員にあってはその職に就いた当月分からそれぞれ支給する。」

第8条(抜粋)

「議長等及び議員で3月1日、6月1日及び12月1日に在職する者に対して、それぞれの期間につき、期末手当を支給する。基準日前1月以内に任期満了等により退職、失職又は死亡した議員についても同様とする。

2 期末手当の額は、それぞれ前項の基準日現在において、同項に規定する者に支給すべき第2条に定める報酬月額及びその報酬月額に100分の45を乗じて得た額の合計額に、3月に支給する場合においては100分の25、6月及び12月に支給する場合においては100分の165を乗じて得た額に、基準日以前3月以内の期間におけるその者の在職期間の区分に応じて、次の表に定める割合を乗じて得た額とする。

基準日が3月1日又は6月1日である場合

在職期間

3月          100分の100

1月15日以上3月未満  100分の60

1月15日未満      100分の30」 

森学元世田谷議員の基本給は、世田谷区報酬条例2条によって61万9千円。

期末手当は、まず基本歳費619,000円に対する1.45倍が基本でこれが89万7千5百50円。

6月の支給の場合、この合計額を1.65倍して満額は148万957円。

基準日6月1日移行、彼の在職期間は1.5ヶ月に満たないため、さらに100分の30を乗じた44万4千2百87円となり、彼は今月基本歳費とあわせて106万3千2百87円を手に職を辞しました。

詩情あふれる童話をいくつも残したデンマークの詩人、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの作に有名な「皇帝の新しい服」、いわゆる裸の王様があります。

着飾ることの好きな皇帝の国に二人の詐欺師が現れ、自分達は「ついている地位にふさわしくない人間か、あるいはどうしようもなく頭のわるい者には、まるで見えない布地で織られている」衣装をもっているといいふらします。

当然老大臣も、とりまきも、そして皇帝自身にもその”権威”は目に見えませんが、権威のない自分を認めたくない皇帝とその取り巻きは街にパレードに繰り出し、それを見た人々も口々にばか者と思われないよう、目に見えない衣装という権威をほめそやします。

唯一パレードを見た子供だけが、皇帝は何も着ていないと言い始め、衆目も大声をあげまじめます。

この話の一番痛いところは、皇帝と側近が、いまや衆目に指摘された裸の権威を、さらに胸を張って行進をつづけざるをえなかったところにあります。(参照:アンデルセン童話集 荒俣宏訳)

しかしわたしたちは裸の王様の話を笑うことがあっても、自らの身の回りに権威のあるブランドバッグや、権威ある肩書きへ寄り添うことには余念がありません。

ボーナスが出るまで待って辞職するその態度を見るまで、わたしたちは一等書記官という候補者が勝手に纏った権威の前に、その人の本質をはっきりとは見定められないのです。

*世田谷区役所に直接確認の電話をしたところ、以前の記事において期末手当と基準日の関係の理解に誤りがあることがわかりました。お詫びして訂正します。

 

 

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