ミツバチは己を放棄して4000万年を手に入れた

銀座ハチミツ飛ぶ人気 ビル屋上に10万匹(朝日新聞)
「ミツバチを飼っているのはNPO法人「銀座ミツバチプロジェクト」。紙パルプ会館(銀座3丁目)屋上で飼育し始めたのは昨年3月。沖縄の業者から購入するなどした。昨年に続いて今年も10万匹が活動する。 」

憲法の13条をごらんください。

第13条

「すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。」 

ミツバチの針には、釣針のような逆鉤がついていて、脊椎動物を刺すとぬけなくなります。

そして刺したハチは針を失い、早晩死ぬ運命にあります。

しかしちぎれて敵の体表に残った針からでる揮発性物質は、他のハチを強く興奮させます。

一匹が刺せば、次々と特攻隊員たちが刺しつづけます。

数万の個体を含む集団にとって、巣がまもられるなら、数百の個体が死んだとしても、ハチの社会では問題にはしません。

ミツバチの社会にはおよそ四千万年以前から、こうした個体の自立性を完全に集団に譲り渡した、冷厳な社会構造ができ上っています。

彼らハチ類(膜翅類)は十万以上の種類を持ち、さらにその数倍の未発見種が予想されている動物界屈指の大所帯です。

そしてその類としての抜群の安定性は、ヒエラルキーという機能に個体を迷いなく押し込んできたことで成り立っています。(参照:みつばち―自然界の幾何学者

わたしたちの憲法の13条が謳う”個人の尊重の原理”とは、個人主義、つまり社会における価値判断の出発点を個人に求める考え方を宣誓したものです。

それは国家の利益を個人の自由の前に優先させる、戦前の全体主義という思考方法とは180度異なった原理です。

しかし”個人の尊厳”という思考原理は、単に利己主義を許すものではなく、利己主義と全体主義の両極端を排斥し、”基本的人権”というモデルのプロポーション憲法に最初に記述するものです。

そしてその個人から出発する思考方法が、繁栄という点でミツバチの社会構造の歴史を凌駕できるかどうかは、ひとえにヒト類の最終兵器、”想像力”が請け負っています。

 

 

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