SIT:NOPAIN NOGAIN

「救急車を呼べ」閃光と怒号の中、捜査員が次々に突入(読売新聞)
「警視庁によると、竹下容疑者は、ベランダに面した和室で、頭から血を流し、あおむけに倒れた状態で発見された。手足を小刻みに動かし、捜査員の呼びかけにも反応したため、同17分、銃刀法違反の現行犯で逮捕した。この突入の3時間ほど前から、SITは、同じ都営住宅の5号棟の空き部屋を利用し、突入に向けたシミュレーション(模擬訓練)を実施。ブルーシートでベランダを隠しながら、約20人の捜査員が無線を片手に突入の手順を確認した。一方、SITの突入の際には、遠巻きに様子をうかがっていた知人とみられる男性数人が、警察官の制止を振り切り、「やめろ」「死ぬな」と叫びながら102号室に向かって走り出す一幕もあった。」

警察法の第67条をごらんください。

67条(小型武器の所持)

「警察官は、その職務の遂行のため小型武器を所持することができる。」 

日本赤軍によるダッカ事件後の1977年、警察は極秘裏に対テロ特殊部隊の設立に着手しました。

同年には日本警察初の対テロ特殊部隊が秘密裏に設立、警視庁刑事部捜査一課特殊班、通称SITは1992年4月に発足しています。

SITはハイジャック、凶器使用人質立てこもり事件や誘拐事件など一般刑事事件に出動するための特殊班であり、ネゴシエーターと呼ばれる交渉担当捜査官、凶行逮捕する突入専門捜査官、遠距離から射殺する狙撃専門捜査官で主構成され、そこに無線、電話設備に精通する東京都警察通信部専門職員も加わります。

テロ事案担当の警視庁特殊急襲隊(SAT)のような、即射殺もいとわない対テロ戦術では解決が難しい一般刑事事件解決にあたるため、その設立当初は捜査一課の刑事、及びSATからの選抜者で編成されました。

実際、2003年に発生した板橋区都営アパート猟銃立てこもり事件など、難しい事件を経験しています。(参照:警視庁・特殊部隊の真実 伊藤鋼一 大日本絵画

しかし特殊訓練と特殊重火器に身を包む彼らも、警察法上67条の範囲外にある特殊な存在ではありません。

67条は、旧警察法下での警察官の武器携帯根拠条文を、警察官等職務執行法の7条における武器使用規定だと解釈されてきたものを、改正を機に警察法の中に明記したものです。

そこにいう小型武器とは、警察官が個人装備として携帯できる程度をいうと解釈され、所持とは携帯に限定されず、その占有下にあればよいとまでは解釈されていますが、警察特殊隊員という存在と装備がその範囲内に収まるものかは微妙です。

実際1970年、広島で発生した瀬戸内シージャック事件で、ライフル銃を所持する犯人を射殺した大阪府警機動隊員は、殺人罪の告発を受けており、警察官が武器を所持する根拠法である警察法67条の非常にデリケートな性格を語っています。

それがゆえに特殊部隊の設立は秘匿、その運営も秘匿と成らざるを得ない側面があります。

しかし現実に、日本人による国外におけるテロと、国内におけるテロの両方を経験した現代を生きるわたしやあなたには、命を賭けて特殊任務を遂行できる火力を備えた遊撃班の存在がもはやどうしても必要です。

そしてそうした存在を維持するために、私たちは「法の超拡大解釈」という確信的黙認を支払っているのかもしれません。(私見)

 

 

法理メール?  * 発行人によるメールマガジンです。