うさぎは舌打ちをしてお金を返すだろう

NOVAの精算規定無効=中途解約めぐる訴訟-最高裁初判断(Yahoo)
「英会話学校大手NOVA(ノヴァ、大阪市)を中途解約した男性が未受講分約31万円の返還を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は3日、契約時より高い単価で受講済みの分を計算するノヴァの精算規定を無効とし、ノヴァ側の上告を棄却した。」

特定商取法の49条2項1号のイをごらんください。

特定商取引に関する法律

第49条(中途解約権)

「2 役務提供事業者は、前項の規定により特定継続的役務提供契約が解除されたときは、損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を特定継続的役務の提供を受ける者に対して請求することができない。

1.当該特定継続的役務提供契約の解除が特定継続的役務の提供開始後である場合
次の額を合算した額

イ 提供された特定継続的役務の対価に相当する額」 

特定商取引に関する法律とは、もともと訪問販売法という名称の法律でした。

それはかつて訪問販売,通信販売,連鎖販売取引、いわゆるマルチ商法を規制対象として,これらの販売形態における一定のルールを定めることにより,消費者被害の防止を図ることを目的として昭和51年に制定された法律でした。

しかしその後、サービス取引の多様化に伴い、エステティックサロン、外国語会話教室、学習塾、家庭教師派遣等の継続的役務取引において、解約を巡るトラブルが多発するという事態が目立つようになってきました。

これら取引はたいてい長期多数回のコース契約を締結します。

しかし実際にサービスを受けてみると広告や勧誘時における説明の際に受けたイメージと異なり、当初期待した成果が得られないことも少なくありません。

しかしいざ中途解約をしようとすると、業者が中途解約制限特約、多額の違約金特約などの適用を主張し、紛争が生じるという例が多発したのです。

そこで改正により新たな規制対象として、「特定継続的役務提供」の章が設けられ、政令により、エステティックサロン、外国語会話教室、学習塾、家庭教師派遣の4業種が規制対象として指定されました。

そして特定商取法による規制の一つとして、クーリングオフ期間経過後に利用者側が中途解約をした場合の違約金等の上限規制があります。

それは違約金に上限を抑えることにより、利用者側が違約金等の請求を恐れて中途解約権の行使をためらうことがないようにして、中途解約権を実質的にも行使可能なものにした規制です。

したがって約款などで定められた解約精算に関する特約は、内容が合理的か、またその内容が利用者側の中途解約権の行使を必要以上に制限しないかといった実質的な観点で判断しなければなりません。

そしてもしこれに反する特約はその効力を否定すべきです。

でなければ、特定商取法が用意した解約精算上限規制は、無意味な条文になってしまいます。

ただし一方で49条の2項1号イは、上限規制中で事業者側から請求できる金額として、「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」を掲げています。

しかしそれは事業者側からみた真っ当な請求額を確認的に記載したものにすぎませんので、解約時には特殊な単価計算をなして「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」として前払い授業料から控除しようとすることは、事実上の上限規制の潜脱になってしまいます。(参照:平成17年2月16日 東京地裁 事件番号 平成16(ワ)25621 判決文)

換言すれば、解約時のために約款で用意された特殊な単価は、49条の2項1号イを破壊する砲弾と読み得るのです。

受けてみなければ中身が分からない長期のサービスを提供するビジネスの経営は、ひとえに「契約した人の中からどうやって大量の中途解約権を行使しようとする人を引き留めるか」に力点がかかっているといえます。

そしてそれは本来、「対価を支払った人に期待以上のサービスを提供していくこと」によってなされなければならない仕事なのです。

 

 

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