国賠の暗視ゴーグル

タミフルに隠された真実 第二の薬害エイズに発展か(日経BP)
「なぜ、タミフルによってそのような異常行動が起きるのかの説明も、実にわかりやすく、明快に示されている。要するにに、こういうことなのだ。「タミフルは脳の働きを抑制することが動物実験と人に起きる症状から分かっています。睡眠剤や鎮静剤、麻酔剤、アルコールと同じです。アルコールを飲むと、寝てしまう人、興奮して暴れる人などがいます。麻酔剤は、強く作用すると呼吸が止まります。麻酔中は人工呼吸器で呼吸していますので死ぬことはありませんが、人工呼吸しなければ呼吸が止まって死に至ります」「脳には、それぞれの神経が秩序だって働くようにコントロールしている『統合中枢』という管制塔のような中枢があります、タミフルを飲むと、脳の中にタミフルが入り込んで、まずその部分を乗っ取ります。そうすると、いろんな神経が思い思いに勝手に動きだすために異常行動を起こすのです」「タミフルで低体温になりますが、熱が下がったと喜んではいられないのです。これは体温中枢が乗っ取られているからです。今まで経験したことのない34度や32度といった低体温になる人もいます。これは異常行動や呼吸が止まる前兆です。もっと激しく作用すると、人の命に最も大切とも言うべき、呼吸中枢が乗っ取られてしまいます。すると、呼吸が止まり、命もとまります」「つまり、体温中枢が乗っ取られると異常なまでの低体温、統合中枢が乗っ取られると異常行動、呼吸中枢が乗っ取られると呼吸困難、突然死になるのです」」

国家賠償法の1条1項をごらんください。

第1条

「1 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。 

薬害事件における国の責任についてされた最初の最高裁判断は、平成7年6月23日第二小法廷判決です。

それはクロロキン製剤によるクロロキン網膜症に罹患した患者とその家族らが、国、製薬会社、医療機関に対して損害賠償を請求した争いでした。

最高裁は「日本薬局方に収載され、又は製造の承認がされた医薬品が、その効能、効果を著しく上回る有害な副作用を有することが後に判明し、医薬品としての有用性がないと認められるに至った場合には、厚生大臣は、当該医薬品を日本薬局方から削除し、又はその製造の承認を取り消すことができる」として、改正後の薬事法74条の2を待たずに、国家による”規制権限”の存在を認めています。

そうした規制権限の根拠は、「薬事法の目的並びに医薬品の日本薬局方への収載及び製造の承認に当たっての厚生大臣の安全性に関する審査権限に照らすと、厚生大臣は、薬事法上右のような権限を有するものと解される」のだとし、特定条文ではなく法全体の趣旨から導いています。

ただし国の責任が発生する分水嶺については、規制権限の不行使が即、国家賠償法1条1項の適用上違法と評価されるものだとはしていません。

「副作用を含めた当該医薬品に関するその時点における医学的、薬学的知見の下において、前記のような薬事法の目的及び厚生大臣に付与された権限の性質等に照らし、右権限の不行使がその許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使は、副作用による被害を受けた者との関係において同項の適用上違法となるものと解するのが相当である」のだという慎重な判断フレームを置いています。

”許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められる”というフレーズは、行政の責任を問う場面でよく耳にするなじみ深い言い回しですが、一般に裁量権消極的濫用論と呼ばれています。[以上参照:行政判例百選 (2) 第5版]

現在の戦後憲法17条は,戦前憲法にはなかった公権力の行使に基づく損害の賠償責任を認めました。

そしてその具体法として、国や公共団体の損害賠償責任に関する決まりを一般的に定めたのが、国家賠償法という法律です。

その1条2項は、故意や過失がなければ国家が公務員へ求償できないことをさだめ、国家責任という概念をより純化しています。

戦後まず姿を現した純国家責任という化生は、その姿を捕らえるため判断基準という暗視ゴーグルを必要としますが、薬害におけるゴーグルがやっと与えられたのが、およそ12年前にすぎません。

未来を少しずつマシにしていくため、私たちはこれからもたくさんの失敗と、時に率直な反省を重ねていく必要があります。

 

 

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