自由な季節、不利益な季節

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「本人に事情を聴いた後、未成年であるため両親と相談した上で、専属契約を解除した。」

民法の5条1項をごらんください。

第5条(未成年者の法律行為)

「1 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。」 

民法のメガネをかけて見る社会では、参加している人すべてに取引をフェアに判断できる能力があることが前提に権利能力が与えられています

権利能力とは、権利義務の主役になれる資格のことをいい、これを一人でなすことのできる人を行為能力者といいます。

しかし現実には赤ちゃんに判断能力があるはずもありませんが、権利能力自体は、その赤ちゃんにも与えられています。

よって権利能力はあるものの、判断能力が十分でない人は行為能力者とはあえて呼ばず、その人にとってアンフェアな結果がもたらされない法律的なカバーが必要です。

もともと意思能力が制限されている人がした法律行為は民法上無効になるので、個別的にそれを証明すれば保護が可能だといえますが、その作業はかならずしも簡単ではありません。

そこで民法がひとまとめに意思能力が制限されている人たちの範囲を決め、その範囲の人たちは法律行為を取り消すことができるとカバーしたのが、制限行為能力者制度です。

そして未成年は民法上、この制限行為能力者という範疇に入れられています。

民法は、未成年者の判断能力を本人の自覚を問わず、”その能力ではあなたにとってフェアな結果をよばない”と判断しているわけです。

解除の通告を受けるのもまた法律行為ですので、制限行為能力者である未成年者は、事態を正確に理解できる法定代理人、普通ご両親に同意を得なければなりません。

契約を解除された人は、深刻な法律的責任を相手方へ負う場合もあるからです。

未成年とは、一般に語彙が少なく、自分のしていることの真の意味を把握しづらい時代かもしれません。

しかしそれだけに自分自身からさえも自由な季節だといえます。

同時に民法はそのことの法律関係的危うさを、本人の前に立って社会に宣告しています。

 

 

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