密漁者は血で飯を食う

ヘリ不正輸出のヤマハ発、中国から高額「授業料」得る(読売新聞)
「調べによると、中国側からの送金は、1機当たり約1575万円の無人ヘリの代金とは別で、取引が始まった2001年ごろからあったという。送金の趣旨について、ヤマハ発側は「現地で無人ヘリ操縦を教えた授業料」と説明した。一方、国内で系列会社の代理店が開催する無人ヘリ操縦技術の受講料は1人当たり50万円前後という。また、スカイ事業部主査の板垣孝文容疑者(57)(同)が技術指導のため数回、中国に渡航していたことも判明しており、捜査本部は、渡航の目的についても詳しい説明を求めているとみられる。」

外為法の第48条をご覧下さい。

外国為替及び外国貿易法

第48条(輸出の許可等)

「1 国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出をしようとする者は、政令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。」 

外為法48条は”特定の種類の貨物”が”特定の地域”へ輸出されることで生まれる世界の危機を防ぐため、その輸出を許可制とし、あらかじめ火種を押さえようという条文です。

そこでいう”特定の種類の貨物”及び”特定の地域”は、「輸出貿易管理令」に詳しく規定されています。

そこではたとえば、武器や武器関連製造設備、原子力関係が全地域に向け許可要、毒ガス用科学原料がイラン・イラクに向け許可要、コンピュータや全駆車が南アフリカに向け許可要、それ以外のココム関連がアフガニスタンなどの地域へ許可要とされています。

平和主義を憲法に採択するわたしたちの国の輸出によって、国際紛争が助長されるような事態があれば、わたしたちの憲法はただのカモフラージュに成り下がります。

そこでMETIはこれを避けるため、武器輸出三原則に基づきこれらの国々への特定物資輸出を厳格に監視しているのです。

(よって今回のヤマハもそもそもMETIによって告発がなされています)

もともと武器輸出三原則にいう武器とは、軍隊が使用するものであり、直接戦闘の用に供されるものだけをいいました。

しかし外為法48条が血で飯を食う行為をより実質的に監視しようとするならば、許可対象は、転用可能なものも含めて武器輸出三原則にいう武器よりも広く定義しなければならず、実際そうなっています。

たとえば産業用ダイナマイトなどは武器三原則にいう武器にはあたりませんが、輸出貿易管理令はこれを輸出に許可を要する対象としているのです。

ヤマハが軍事転用可能なラジコンヘリを、報告数値を書き換えてまで輸出したことは外為法48条に違反しています。

そこはこっそりと大量の魚を捕獲できる、限られた人しか知らない穴場の漁場だったかもしれません。

しかしその捕獲した魚は、平和憲法の腹を食いちぎる獰猛な種であることもまた、たいていの漁夫は理解しようとしないのです。

 

 

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