親族:刑法が閉じないポート

叶恭子、実妹を「1000%信じてた」、美香は涙で“ヤラセ”を完全否定(サンスポ)
「指輪など総額5億円相当をマネジャーで実妹、晴栄さんに持ち逃げされていたことが分かった叶姉妹の長女、叶恭子(44)が21日、都内で会見した。晴栄さんは17日に警視庁赤坂署に出頭したが、いまだに音信不通。心労で激ヤセした恭子は「(晴栄さんを)1000%信頼していた」と絶句、美香(39)も騒動自体がヤラセとの憶測を涙で完全否定した。」

刑法の244条をご覧下さい。

第244条(親族間の犯罪に関する特例)

「1 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。

2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

3 前2項の規定は、親族でない共犯については、適用しない」 

親族相盗例とは一定の罪を犯した人と被害者が親族関係があれば、その刑を免除するか、告訴がなければ訴追されないという刑法の取り決めのことです。

それは「法は家庭に立ち入らない」という精神をもって、刑の免除や、被害者側の告訴を待って処罰することにしようとしたのだといわれています。

言い換えればそれは、個人の前に法があるのか、あるいは法の前に個人関係があるのかという命題のために、刑法が用意した緩衝材だともいえます。(私見)

親族相盗はたとえば盗まれた衣装を所持している人、そしてそれを本来所有している人の両方と、盗んだ人との間に身分関係を必要とするのが学説上の通説でもあり、また判例の結論でもあります(最高裁平成6年7月19日)。

したがって、たとえば恭子さんの衣装がリースであったりした場合はこの特例の適用はありませんし、またたとえば妹さんの恋人がもし共犯関係にあったとすれば、その恋人に対しては適用されません。

なぜなら判例理論によれば、親族相盗は政策的な見地から違法ではあっても処罰が阻却されるだけであり、その事件の全関与者が盗んだ人と親族関係になければ、そういった趣旨が全うできないからです。

今回は実の妹さんとのことなので、直系血族とは呼ばれず、傍系血族と呼ばれることになり、叶恭子さんと同居していたとすれば同居の親族となり、244条1項が刑を直接免れさせます。

もし同居していなかったとすれば、恭子さんが妹さんを告訴するかどうかを待つことになります。

いずれにせよ刑法は一度のその出動を見合わせることになります。

それは家族の形を法ではなく、彼ら自身に任せるためです。

 

 

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