NTTが手をかざすと、固定資産は流動資産になった

固定電話加入料「値下げで損失」 賠償求め集団提訴へ(朝日新聞)
「前波亨哉(たかや)代表(64)は「NTT自身もパンフレットで『電話加入権は大切な財産』と宣伝していた。財産価値を減らすのなら減額分を補償すべきだ」と訴える。 一方、NTTは「毎月の基本料を割安な水準に設定するため、基本料の一部を前払いしてもらって回線設備に投資する実費。加入権の財産的価値を保証する権利金ではない」と説明する。」

法人税法の2条22号をご覧下さい。

第2条(定義)

「この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

22.固定資産
土地、減価償却資産、電話加入権その他の資産で政令で定めるものをいう。」 

商法では、貸借対照表に掲げられるプラスの財産のことを資産と呼んでいます。

そこでは現金などを流動資産、土地などを固定資産と呼んでおり、法人税法の2条22号は、電話加入権も土地などと同じ固定資産に分類しています。

法人税法はそれらの金額をもとに、結局その次点での当該会社にいくらの税金をかけるべきなのか、あるいは税金をかけないべきなのかを決定しますので、「逃れられないものは死、そして税」という言葉もあるとおり、税法による固定資産の定義は社会の厳格な基準にはなっているはずです。

ところで株式会社というものが世間に迷惑をかけながら倒産したとき、会社に部品を納入していて踏み倒された業者さんがいたとしてもそこの株券を買っていた株主、すなわち小さなスポンサーはいちいち業者から直接文句はいわれません。

そのかわりに、業者さんのために会社の内部には常に「資本」というものを確保する決まりにしています。

会社と取引する業者さんは、その会社の資本をいざというときの頼み綱にしていますので、これを勝手に出資者である株主に払い戻していたのでは、会社はまともに業者さんたちなどから相手にしてもらえません。

会社に滞留しているお金から出資金を取り戻せないとなると、株主たちが投資金とそれに見合う利益を得ようとするときの唯一の手段は「株式」を売ること、だけになります。

それがために → 株券というものは非常に譲渡しやすいように環境がつくられています。

たとえば最初からそれを細分化しておくことで、小さな単位でのやりとりを可能にし、受け渡しも紙切れ(株券)で行うという非常にスッキリとした体裁をとっており、さらには巨大な証券取引所と証券会社がベルトコンベアのように売買を処理していきます。

そして結局はこのこと自体が、株式会社という巨大なお金をつくるためのマシーン達を駆動させていくのです。 [参照:プレップ商法 木内宣彦 弘文堂]

電話加入権は固定資産だという税法上の定義とは真っ向から対立し、NTTによればそれはミズモノの流動資産だとなりそうです。

わたしも7万円以上のお金を払って電話加入権を買った口ですが、してみると払ったわれわれは知らぬまにNTTに対して”財産的価値は保証されない株主的な立場で投資をさせられていた”という解釈が時代の落とし処のようです。

日本銀行が保証することをやめれば紙幣が紙になるように、NTTが有形無形のうしろだてを辞めた電話加入権はその交換価値をゆっくり喪失しようとしています。

法人税法上の定義は調整されたとしても、問題は凄まじく蓄積されたNTTの資産を、配当も得られなかった株主のような目で皆が見つめはしないだろうかという点です。

法理メール?