P2Pに先を越された公益通報者保護法

愛媛県警が架空捜査報告書 ウィニーで流出(朝日新聞)
愛媛県警捜査1課の男性警部(42)の私有パソコンからファイル交換ソフトウィニー」を介して捜査情報などがインターネット上に流れた問題で、流出した捜査報告書の中で02年に未解決殺人事件の情報を提供して謝礼を受け取ったと記載された住民2人が、県警から事情をまったく聴かれていなかったことが3日、関係者の証言で分かった。捜査報告書通りに捜査報償費が支払われていれば、実態のない捜査報告書に基づいて公費を支出していたことになる。」

公益通報者保護法の第7条をご覧下さい。

第7条(一般職の国家公務員等に対する取扱い)

「第三条各号に定める公益通報をしたことを理由とする一般職の国家公務員、裁判所職員臨時措置法の適用を受ける裁判所職員、国会職員法の適用を受ける国会職員、自衛隊法第二条第五項に規定する隊員及び一般職の地方公務員に対する免職その他不利益な取扱いの禁止については、第三条から第五条までの規定にかかわらず、国家公務員法、国会職員法、自衛隊法及び地方公務員法の定めるところによる。

この場合において、一般職の国家公務員等の任命権者その他の第二条第一項第一号に掲げる事業者は、第三条各号に定める公益通報をしたことを理由として一般職の国家公務員等に対して免職その他不利益な取扱いがされることのないよう、これらの法律の規定を適用しなければならない。」 

公益通報者保護法とは、公益のために通報を行った労働者に対する解雇等の不利益な取り扱いを禁止する法律です(内閣府 公益通報者保護制度ウェブサイトより)

未だわたしたちの記憶に新しい、三菱の長年に渡るリコール隠しの事実や、雪印の牛肉産地偽装表示問題などが企業内部からの情報提供により明るみにでたことは、真の情報は必ず内部からしか出てこないという側面の社会的重要性を図らずもクローズアップしました。

しかし雪印の偽装を通報した取引倉庫業者、西宮冷蔵に至っては自主廃業に追い込まれるなど、日本商取引社会暗黙の了解と、そこを超えた社会の安全要請との間には歴然たる隔たりが今も存在します。

そのギャップを法制で埋めるべく、公益通報者保護法が4月1日から施行されました。

公益通報とは、労働者が、不正の目的なく、公益に反する事実が行われている旨を、しかるべきところに通報することをいうのだと、法2条は定義しています。

公益通報を行った人に対しては、解雇、派遣契約の解除、不利益取り扱い等を禁止し、より公益に資する情報の内部からの提供を促しています。

労働基準法にいう労働者とは、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる」人のことをいいます(9条)。

もちろん一般職の国家公務員等も、公益通報を行うなら免職その他不利益な取扱いが禁止されていることを法9条は明言しています。

しかし残念ながらファイル交換ソフトを私用で使っていた司法警察職員は、意思を持って通報したわけではありませんので、新法の適用を受けることはありません。

Winnyによるファイル流出は図らずも、公益通報者保護法が目指す「国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法令の規定の遵守を図り、もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展」を図る(1条)という目的に資するデータを提供しました。

果たして「思わぬファイル流出でもなければ、内部不正情報など恐ろしくて外に出せないのだ」というのがわたしやあなたが暮らす社会の現実なのか、公益通報者保護法の効果を、働くわたしたちはきっと注意深く見つめていくのだと思います。