覚醒剤が好きな監督と製作委員会という象

キョンキョン主演映画の豊田監督、覚せい剤で逮捕(goo)
「歌手で女優、小泉今日子(39)の主演映画「空中庭園」(10月公開)の監督、豊田利晃容疑者(36)が25日までに警視庁犯罪対策5課などに覚せい剤取締法違反(所持)の現行犯で逮捕された。」

民法の674条をご覧下さい。

第674条〔損益分配の割合〕

「当事者が損益分配の割合を定めざりしときは其割合は各組合員の出資の価額に応じて之を定む」

映画「空中庭園」は”空中庭園製作委員会”によってプロデュースされています。

製作委員会とは、映画製作という大変リスキーな投資行為に対して活用されているリスクマネジメントシステムで、それは民法では任意組合に分類されます。

ここで組合とは「お互いが出資し合って共同の事業を営むことを約束する契約」のことです。

任意とは、労働組合・協同組合・共済組合・公共組合など特別法上で定められた組合ではない組合という意味で、よって法人格は与えられません。

ヒットした映画を巡っては、原作本の出版社、放映予定・海外輸出するテレビ局、キャラクター商品を作る玩具メーカー、映画の中でたびたび登場する飲料水メーカー、自動車メーカーなどなどが様々な利益回収方法を独自に持っています。

そこで企画者はそれら利を得そうな出資者を回り、GOサインが出ればそこで各々の出向社員により任意の組合、製作委員会ができあがりです。

作品の著作権は出資率に応じて共同保有されますが、すべてのメーカーが権利に則って各自の方法で得た収益は一旦組合に戻され、民法674条に従い、分配された著作権の比率で出資者であるメーカーに還元されます。

映画の製作委員会とは、なにもロシア映画やフランスの小品が大好きな、善意の映画マニア集団などではなく、リスクとリターンの計算を研ぎ澄ました収穫のプロの集団です。

一作品限りの契約による集団ですので、映画製作会社とことなり集団そのものを存続させるための論理が不要になり、自由度が高くなります。

映画への出資とはそこまで慎重なシステムを組まなければ、とても粋人が一人で追い切れるような規模でも安全な投資でもありません。

映画監督というお仕事は、映画の「投資して、収穫する」という経済活動面から再考察してみれば、非常に緩やかな責任しかないポストです。

任意団体によって集められた巨額の資金は、プロデューサーの意向を受けながらも、ひとえに彼の内面活動にそのヒットの本質を一任され、たとえ映画がコケたとしても、彼は一切の金銭による賠償など求められません。

それだけに彼には、いままでにない革新的な感性か、数字の見込める安定した職人芸などが求められますが、たとえそれが完全なギャンブルだとしても、最低限出資者にその負けを認めさせるには、公開するところまではもっていく責任感も求められます。

映画「空中庭園」も「空中庭園」製作委員会によって製作されています。

公開の情勢は微妙であり、公開延期による機会損失、つまり出資者に与えるお金の損害は相当額にのぼるでしょう。

映画監督は巨額の出資金を任された、選ばれし象使いです。

象が芸をして投げ銭を集める前に、谷底に落としてしまうような無責任な象使いがいれば、誰も象を貸さなくなるのは言うまでもありません。
 

法理メール?