ベッカムへの唾とハンムラビ法典

ベッカム、戸田のツバ吐き激怒/親善試合(Yahoo)

「FWロナウドは前半終了間際、元W杯審判の岡田正義氏の死角で戸田に蹴りを入れた。後半になってもRマドリードのイレブンは戸田に対する執拗(しつよう)なハードコンタクトを繰り返し、ついには戸田を右ひじ負傷による交代(後半36分)に追い込んだ。」

ハンムラビ法典の第196条をご覧下さい。

§196

「もしアヴィールムがアヴィールム仲間の目を損なったなら、彼らは彼の目を損なわなければならい。」(ハンムラビ「法典」 中田 一郎 (翻訳))

現在の地中海近く、長く続いた戦乱の後、メソポタミアを統一することに成功したバビロニアの王、ハンムラビは、シュメールに伝わる法典を編纂し、世界最古の法律をまとめました。

これがハンムラビ法典です。

強い者が街を闊歩する世界に統治を取り戻すべく、ハンムラビ法典身分制度や刑罰制度を厳しく定めましたが、その中で現代でももっとも引用される有名な条文が196条、「目には目を」です。

このタリオ(同害復讐)の原則と呼ばれる条文は「やられたらどんどんやり返せ」という意味の一文ではなく、「目をやられただけなら、目以上の害を加えてはならない」という意味で読むべきであるといわれます。

なぜならばハンムラビ法典196条は厳密に「アヴィールム」という身分の者同士でのルールであると文言が規定しており、その条文は同じ身分の階層同士なら同じ応報が必要であるという哲学の現れだからです。

それ以下の身分の者の目をアヴィールムが傷つけた場合、金銭賠償で終わらせるべしと定められていました。

目を害した者の目が害されるとき、それらの者はともにアヴィールム身分にあることを証しますので、ロナウドから戸田がケリを入れられたのは「同族同士のルールはこうだ」という表現であるともハンムラビ法典ならいえます。

球を蹴り合ってゴールを決める競技で顔にツバをはきかけるのは正当業務行為とはいえない暴行(刑法208条)であるどころか、その行為が示す象徴性は、西洋人にとって日本人が考える以上の屈辱を与えますので騒ぎになるのも当然といえます。

混乱をさけるためには選手に向かって意図的なツバ吐きという行為があったのかなかったのかを、まずはっきりさせることが必要になります。

そしてもしそれがあったとしたならば、いくら世界の一流選手とのプレーに同等意識が不可欠だとしてもJの各選手に行為の法的評価と、何よりも行為の示す象徴性とをレクチャーすることが必要かもしれません。

ハンムラビ国法の編纂したハンムラビ法典バーブ・イリ(神の門)と呼ばれた都市、バビロンを発展させ、ジグラット(聖なる塔)と呼ばれる巨大建築や空中庭園をもたらしました。

砂漠に巨塔を建てたのはハンムラビ法典で人々が心に一線を引いたからなのだと、古代の歴史が証明しているのです。

 

 

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