オリンピックから除外された野球と「情報」の理解

実を結んだロビー活動 テコンドー、五輪存続決定(朝日新聞)

盧武鉉大統領も巻き込んだロビー活動と、改革の取り組みが実った形だ。投票後、関係者は話した。「野球? ソフトボール? 何の努力もしなかったでしょ。我々は残った。当然の結果だ」

オリンピック憲章53条3項をご覧下さい。

53条(オリンピック競技大会のプログラム)

「3 見直しの各機会には、競技、種別、種目の追加基準が見直され、競技、種別もしくは種目の追加や除外が権限をもったIOC の機関によって決定される。」
 

ロビー活動とは、特定利益を追及する人、団体が議会に入る前の議員に控え室であるロビーで働きかけて、直後の政治的決定に影響を及ぼそうとする院外活動をいいます。

IOCは委員会ですが、委員会とは自然人が集まった合議体に他ならず、そして合議体とは複数人の判断を取り入れる決定方式をいいます。

合議体の欠点は決議に時間がかかることにあるため営利を追求する会社等の意思決定には向きませんが、より慎重で、誤りのない判断を要求される国策や、国家間協定などには合議が向いており、実際日本の国会も衆議院と、参議院という二つの合議体で構成されています。

選定された委員や議員がそれぞれの背景を代表して発言するため、委任の意義をどう解釈するかにより各代表者の発言における自由度は変わりますが、普通一旦選出された合議体における代表者は、発言をその背景に直接的には拘束されなくなると考えられています。

すなわち、選出された委員や議員は、その足跡から切り離されて、立法という事実上の強大な権力を手に入れるのです。

このため今日も永田町には、各団体が各々所属する人間の利益を背負い、日本各地から集っています。

オリンピックで競われる競技に選ばれることは、当然当該競技の人口や、競技に対する社会からの注目度を上げ収益を得ることに直接影響するため、団体関係者にとってはまさに死活問題です。

オリンピックで競われる競技の種目は直接、毎々更新されるオリンピック憲章に掲載されますので、この条文を直接操作できる国際オリンピック委員会の委員の挙動一つ一つは、分析すれば未来を示唆するまでに象徴力を帯びています。

ロビーという合議の喉元で、特定団体が代表者の口の動かし方を操作しようとするロビー活動は、一見合議制の精神に反しているようにも見えますが、それがルールに乗っ取った範囲の行為である以上、むしろ代表者に直接働きかけない特定団体のほうこそ、とんだ世間知らずであるとさえいわれてもしょうがありません。

野球やソフトボールのプレーヤー・関係者・愛好家達は、「残念だ」とばかり憐憫にふけることなく、今後は現実に目覚める必要があります。

現実とは、他の誰の手も経ていない、生の情報を得る活動のことです。

国際社会に対して日本が後れを取るのは、常にこの問題に終始するといっても過言ではありません。

そして生の情報の最たるものとは、キーパーソンそのものに他ならず、諸外国はいかような活動に対してもその生の情報を得るために、常に驚くべき予算を組んでいます。

韓国の広報部長が「80人以上の委員と握手した」とは、まさにそのことを語っています。

今後もし、国際的なスポーツ大会等から、特定競技が抜け落ちてしまうことが、国家的視点で見ても大きな損失になるのなら、報道機関や仲介屋を介さない生の情報をいかに取得する道をつけていくのかを取り扱うべく、「情報」という言葉の意味を理解できる人達による組織作りが早急に要請されています。
 

法理メール?